リサイクル~死界~
鬼域/Re-cycle
2007年7月11日 シネマート六本木にて
(2006年:香港=タイ:108分:監督 ダニー・パン、オキサイド・パン)
あまり宣伝もされずひっそりと公開されているパン兄弟による新作ホラー。
パン兄弟の映画の好きなわたしは、ダッシュ!・・・知らない間にひっそりと終わってしまう可能性大ですから。
パン兄弟の映画はホラーばかりのようですが、実は日本で公開されるのがホラーばかりで、恋愛映画や青春映画なども撮っています。
また、双子兄弟で一緒に撮ることもあれば、別々に映画を撮ることもあり、かなりのファンでも混乱してしまうのですが、この映画は、クレジットは「パン・ブラザース」となっていました。
霊が見えてしまうという『The EYE』シリーズの外伝といってもいい話ではありますが、映像がとても綺麗でスタイリッシュで、色の使い方、特に赤と緑の使い方が印象深いです。
ピカソは「赤と緑は人間の情念の色だ」と言ったとか、言わないとか・・・。
映像としては『アブノーマル・ビューティ』に近いかもしれませんが、今回の方がよりファンタジックに壮大になっていました。
主演は『The EYE』のアンジェリカ・リー。
瞳の美しい女優さんです。
人気女流作家のディンイン(アンジェリカ・リー)の新作は、「鬼域」というホラー小説。
霊界を描く・・・と新作発表で話すと、記者からの質問
「実際に霊を見たことがありますか?」
「見たことはありませんが、そういう経験をしてみたいと思っています」
ひとり部屋で、メモにアイディアを書いたり、パソコンに向かってみたりする部屋で、不思議な現象がっ。
そして、あっという間に霊界に足を踏み入れてしまう・・・その霊界とは・・・「忘れ去られたもの」が次々と出現するのです。
朽ち果ててしまったような観覧車、巨大なおもちゃの山、そして出合う老人と少女。
『不思議の国のアリス』では、アリスはウサギ穴に落ちていきます。
この映画では、エレベーターなんですね。
でた、パン兄弟お得意のエレベーター技!
もうエレベーターの恐怖って言ったらパン兄弟といってもいいくらいで、この映画ではまた新たなエレベーター恐怖の描き方で、正直、怖かったです。
よくホラーであるのは「気持悪い」なのですが、本当に怖い。おばあさんと孫が・・・・って所。
ビルの暗い廊下のを歩く時だけ、スクリーンの巾が狭くなったりします。
ワイドスクリーンが急に狭くなるのですね。
次々とディンインが通り抜ける霊界。
この映画は「忘れてしまったもの。捨ててしまったもの・・・そんなものが再び現われる(Re-cycle)という事で、死んでしまった人たちの霊であったり、捨ててしまった物だったり、忘れてしまった風景だったり・・・といった映像がとてもファンタジックです。
ゾンビの皆さんも出てくるのですが、それは怖いというより、哀切漂っているようで、ヒロインもひたすら怯えて絶叫しまくる、という描き方ではなくて、ひるむ、くらいで、小説のネタ探しでもある訳ですから、そうそう意味不明の恐怖ではない・・・覚悟している恐怖のようなスタンス。
何故そうなったのか・・・も、後味悪いような因果だったり、可哀想だったり、宗教に無理矢理くっつけたりしないで、最後は救い・・・のクライマックス・・・そしてぱっと解き放つ!のような緩急のつけ方がとても上手いと思うのです。
部屋の中を何かの影が、すっと横切ったり、といった不思議現象のタイミングの良さもさすが、ホラーお得意の監督です。
こけおどしではない、美学を感じるのです。
特撮を駆使した映画ですが、印象に強く残っているのは、ビルの間にある観覧車と上にぶ~んぶ~んとゆれているパイレーツ。
そして老人にヒントをもらう、本が山のように積み重なって、上からぱらり、ぱらりと本が落ちてくる部屋。
パン兄弟は、アメリカに進出して『ゴースト・ハウス』(原題'Messenger')という映画が待機中。
製作がサム・ライミで、「サム・ライミに見出された鬼才」という宣伝文句ですが、いや、パン兄弟の魅力を語るのに頭に「アメリカに認められた」という冠はいらない、とわたしは思います。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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