転校生ーさよなら あなたー

転校生ーさよなら あなたー

2007年7月14日 新宿ガーデンシネマにて

(2007年:日本:120分:監督 大林宣彦)

 10代の頃観た映画の中で、特に印象の強い大好きな映画がこの映画の元になった同監督の『転校生』(1982年)でした。

今回のリメイク版は、その『転校生』を観たか、観ないか、で感じ方が少し違うと思います。

映画の冒頭、「25年前の「転校生」の仲間と未来の子供たちへ」という字幕が出て、あ~25年前・・・とうるるっとしてしまいました。

 男の子と女の子の体が入れ替わる・・・・ということなんですけれども、1982年版では、お寺の石段から転げ落ちてしまったときに・・・入れ替わるのですが、その時の、缶ジュースの缶が先にこーん、こん、こん・・・・と落ちるシーンがとても好きです。

あの缶ジュースのシーンは名シーンだと思います。

 そして、大林監督の映画のヒロインは、古くは山口百恵、原田知世、富田靖子・・・といった風にちょっと似た雰囲気の女の子をよく起用します。

大林監督の映画についてのインタビューを読むといかに、大林監督が「少女」にこだわっているかわかるのですが、今回のヒロイン、一美を演じる蓮佛美沙子さんという少女は、まさに、「大林監督の少女」でした。

西洋風の顔つきというより、目がすっと細くて、体の線も細くて色白で・・・・かわいい、綺麗というより清潔感があふれるような元気な女の子。

 尾道を好んで描いた監督ですが、今回は信州に尾道から引っ越してきた転校生、齋藤一夫(森田直幸)が再会する齋藤一美(蓮佛美沙子)。前回と違って、初夏の物語ではなく、同じ内容でも夏から秋、そして冬にかけての物語。

 泉で水を飲もうとして池に落ちてしまって、体が入れ替わってしまう・・・原作ではたしか、一夫と一美は小学生なのですが、映画では15歳という思春期に変えて、男と女の心と体の変化が一番、激しい時の戸惑い・・・というのは変わらないし、そのことで起きる周りの戸惑いも同じです。

ただ、リメイク版では、話を変えて、一夫(男)と一美(女)の心と体の戸惑いをよりドラマチックにしています。

からりとしたコメディタッチよりも、しっとりとした哀切漂うストーリー展開。

 ただ、屋外のシーンは必ずといっていいほど、カメラのアングルが斜めになっていたり、ちょっと気恥ずかしいような事も、堂々とやってしまうあたりは、もう大林映画の匂いがいっぱい。

どこを切り取っても大林監督の匂いのようなものを感じます。

ここが、元の『転校生』を観たか、観ないかの違いかなと思うわけです。

 元の『転校生』では、一夫は8ミリの映写機をずっと持っていました。

最後に別れるとき、8ミリのフィルムに映し出される、走る車を追う一美が、追い切れなくて立ち止まる・・・・、当時の映画好きの若者に、とても強い印象を残しました。

しかし、今の中学生が持っているのは、携帯電話。思い出の残し方が違うのです。

冒頭、未来の子供たちへ・・・というメッセージが強く出ているのは、リメイク版の方かな、と思います。

大事にするものを持つことは、忘れないことは、とても大切。そんなメッセージがストレートに伝わる映画です。

0コメント

  • 1000 / 1000

更夜飯店

過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。