図鑑に載ってない虫
The Insects Unlisted in the Encyclopedia
2007年7月14日 テアトル新宿にて
(2007年:日本:103分:監督 三木聡)
どうでもいいような事を、どうでもいいよねえ・・・と言いながらも映画にしてしまうという軽業のようでいて、妙に凝っている三木聡監督の新作映画。
でも、わたしは、見終って、はた。と気がついてしまいました。
今までの映画では、出てくる人たちが、ちょっと変。ちょっと変な人たちが、変なことしててもいいんだよ、という世界だったのですが、この映画では、主人公である「俺」(伊勢谷友介)が、とても「まとも」なのでした。
もちろん、カタギの仕事ではなくふらふらしているようなフリーライターではあるのですが、周りに次々出てくる変な人に、「なんだよっ!それはっ!」とか「違うだろ、全然違うだろっ!」とか「わかんねえなぁ」とか・・・・ツッコミを入れる事がとても多いのです。
今までツッコミを入れるのは、観客だったのですが、今回は映画の中に、つっこみを入れる人が出てくるのでした。
これは、大発見だなぁ・・・・なんて、どうでもいいことを考える自分。
ただ、三木聡監督は、舞台、シティ・ボーイズのライブの作、演出の時は、きたろうと斉木しげるが、飄々と変な事を言ったりやったりしているのを大竹まことが、いちいち、「おいっ!!!!!!」とびっくりする、というのと同じなのだろうと思います。
伊勢谷友介=大竹まこと説をうちたててみました。(まぁ、そんなことはどうでもよろしいのです)
さて、フリーライターの「俺」が、半ば脅迫的に押しつけられた、雑誌『黒い本』の編集者(水野美紀)に書かされることになった「死にモドキ」というものを使って、死んで生き返り、臨死体験をルポしなさい、というお仕事。
雑誌『黒い本』は本も真っ黒だけれども、編集室もすべて黒。そこに白ペンキで「締め切り守らない奴は、殺す!」
おらおら、行きなさいよ、やりなさいよ、締め切り守らなかったらどうなるかわかってるわよね?
しかし「死にモドキ」とは何だ?から始まるので、悪友、ヒッピーまがいの変人、エンドー(松尾スズキ)を誘ってとにかくルポ開始。
ヒントは、真嶋というカメラマンが、以前同じことをしたら、行方不明になってしまった、ということだけ。
では、真嶋を探そう・・・そして出合う色々な人たち。
ここで、出合うのがSMクラブの従業員だったサヨコ(菊地凛子)なのですが、このサヨコが「半分、まとも、半分、変」な微妙なポジションでしたね。
まともな「俺」、中間の「サヨコ」、完全に変な「エンドー」三人の珍道中。
相変らず小ネタの連続で、いきなり全裸の森下能幸さんが、公園の噴水で水浴びしていたり、全裸のまま、遠くへ走っていってしまったり。
警察にも目をつけられていて、車を止められる時に、いきなりフロントガラスにびしゃっと何か。
「これ、なんです?」「ホタルイカに決まっているだろうがっっっ!」
突然、消えたり現われたりする、エンドー、やくざやめたいなーって思ってるやくざ、岩松了。
ボウルいっぱいの塩から(シティ・ボーイズのライブでは「ボウルいっぱいのムヒ」っていうのがありました)を床にぶちまけてしまい・・・・「あっ、見て。ニコラス・ケイジ!」
もう、主義主張とかメッセージとか・・・そんなものはないんですよね、ただおもしろいなー、へんだなーって思ってくれればいいんですね、という空気を作り出してしまう、その個性が好きなんです。
しかし、これは、舞台でも、テレビでも不可な、映画ならではの世界だとも思います。
意外とこの映画は、ラストがきちんとした物語になっています。
俳優さんたちも、奇妙な事をしていても、妙に楽しそう。観ているわたしも、なんだか、楽しい。
暑い夏は、ホラーも、大作映画もいいけれど、ふわーと脱力笑いするのが、体にいいかもしれなです。
海で死んでしまったのは、サヨコなのか、サヨコの母なのか?それが謎。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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