ルネッサンス
RENAISSANCE
2007年7月16日 シネセゾン渋谷にて
(2006年:フランス:106分:監督 クリスチャン・ヴォルクマン)
大胆で、繊細で、個性的であっても古典的なストーリーの美しいモノクロのアニメーションの世界です。
近未来のパリを舞台にしているのですが、全てがモノクロでいつも夜、のようなダークな雰囲気に圧倒されました。
2054年パリ。
・・・といっても無機質なSFのような街ではなく、古いものと新しいものと、美しいものと汚いものが混然としている風景。
その街の風景は『ブレード・ランナー』を思い出させます。
ストーリーは、意外とオーソドックスなハードボイルド刑事ものです。
誘拐された、若くて美しい研究員。
それを担当する、一匹狼のようなタフな体つきの刑事。
謎を握っているような、研究員の姉。
謎の大企業。
研究員は何故、誘拐されたのか?何を知っていたのか?
そんな物語がゆったりとしたペースで、落ち着いたムゥドの中で陰影くっきりと描き出されます。
わたしは、物語がどうだった・・・というより、光と影をここまで追求しぬいた美術感覚にうっとりします。
大変な製作費だったそうですが、それをモノクロで通す、というのがヨーロッパの意地・・・のように思えます。
ただし、台詞は英語です。
特に感心してしまったのは、顔の表情をあまり絵で描かず、白と黒のくっきりとした陰影で描いてしまったところです。
退屈になってしまうところ、全く飽きない美しい白と黒の使い方をしています。
アニメとはいえ、これをもし実写で映画化するとしたら、大人しか出てこないハードボイルド映画になったと思います。
陸橋の上を電車が走ると、水がざぁ~~~と下へ流れ落ちる。
それがとてつもない下の方まで流れ落ちるのをじっくりと追うカメラなど、カメラワーク、画面の構成のセンスもとてもいいと思います。
ハラハラドキドキ、または、楽しく愉快な・・・とはほど遠い、憂鬱な世界。
こんなアニメはめずらしいし、実現してしまった、というのがまた驚きの瞳の快楽でした。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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