終わりよければすべてよし

終わりよければすべてよし

All's Well that Ends Well

2007年7月26日 神保町 岩波ホールにて

(2006年:日本:129分:監督 羽田澄子)

 ドキュメンタリー映画といっても色々な種類があると思います。

あることに、共感して、または疑問を持って密着して一緒に行動していくタイプ。

ひたすら主義主張をなくし観察に徹するタイプ。

そして、深い興味を調査し、追い、それを披露するタイプ。

 この映画は最後の深い興味を・・・というタイプのドキュメンタリー映画でした。

羽田澄子監督が取材したのは、ターミナル・ケア(末期ケア)から、在宅医療制度、そして在宅と病院の間にある緩和ケアと呼ばれるシステム。

全て、羽田澄子監督のナレーションが入り、説明が続きます。

取材したもの、調査したものの公開・・なので確かに、今まで知らなかった世界を知る一環にはなりますが、どちらかというと研修ビデオといった「お勉強」という雰囲気も感じました。

 また、羽田澄子監督の気持、主義主張ががストレートに語られている分、「それはどうかな・・」と思う部分もありました。

それはわたしが今回、取り上げられている在宅医療ではなく、ヘルパーと呼ばれる訪問介護員の仕事をしていた事があるからで、やはり医療と介護は違うのです。

まぁ、現場にいた人しかわからないこの違い。

同じ事を言っても、訪問医師や看護師の言うことは聞くけれど、資格の違う訪問介護員だと全く耳をかしてくれない・・・そんな「差別」が実在します。

監督の意識、主義主張、取材から思ったこと・・・を語る部分が多いので、よくある「ヘルパーさん=お手伝いさん」という間違った認識が見え隠れするのです。

 日本、オーストラリア、スウェーデンの緩和ケアに対する熱心な医師の姿はわかります。

この映画はあくまでも医療、ですから見当違いかもしれませんが、そこに在宅・・・が入ると、訪問介護員はおざなりに出来ない存在かなと思います。

ですから、ナレーションで「ヘルパーがお世話します」と言われたのは、ちょっとひっかかる。

ヘルパーは自立支援の介助の為であって、「お世話する」というのは禁句なんですが、医療に関しては、非常に細かい配慮をしている監督ですが、「お世話する」なんだな、と思ったり。

 今、病院で亡くなる方が80%を越えるといいます。

そんな中で、自宅で・・・という人を支援するのだったら、もうすこし、正確な言葉を学んで選んで欲しいと思う部分がありました。

監督はヘルパー、ヘルパーと何気なく言っていますが、もうその言葉は正式名称ではありません。訪問介護員。

なるほどね、とそれは、ちがうな・・・が交差する、少し居心地の悪い気分。

これが研修で観たならば納得ですが、これを「映画」として、羽田監督の言う事、思い入れ、気持・・・をそのまま鵜呑みにはしたくない気持です。

でもつくづく思ったのは、日本の介護って結局、妻、娘・・・女なのですね。

夫や息子といった姿が見られないのが、まだまだ福祉介護後進国、日本なんだな、とわかります。

この映画は去年の東京国際女性映画祭で上映されたのですが、介護は女の仕事・・・そんな実態から、選ばれたのかな、と思いました。 

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