太平洋ひとりぼっち

太平洋ひとりぼっち

2007年8月2日 NHK BSにて

(1963年:日本:97分:監督 市川崑)

 1962年に日本人で初のヨットによる単独太平洋横断に成功した、堀江謙一氏の手記を翌年にもう映画にしてしまった、というのと、市川崑監督がこの次に撮った映画が、『東京オリンピック』だというのが、凄い映画を次々と世に送り出していたものだ、と感心します。

 この映画は以前、かなり昔ですが、テレビで観ていて、よく覚えているのが、太平洋横断に成功した青年が、風呂に入ると湯船が垢で真っ黒・・というシーンです。

 父、森雅之、母、田中絹代、妹、浅丘ルリ子・・・で長男、石原裕次郎という凄い家庭なのですが、この映画は、リアリズムに徹していて、変に美化したり、誇張したりしていません。

脚本は、和田夏十。

 ヨットが好きがあまりにもひどくて、主人公の青年はどちらかというと、わがままで、友だちもいない、家族からはいつも説教されている・・・という姿。

かなり自分勝手な青年である、という描き方をしています。

 強引に密出国したあとは、ヨットでひとり、まさにひとりぼっちになるのですが、ヨットのシーンはいつもカメラがゆれているのです。

食べ物の事から何から何まで細かく準備したメモがずらずらと出てきますが、「さるまた80枚」とか・・・リアリティありますね。

食べ物も、角砂糖をカップにいれて、バターをいれ、そこにクリープをまぜて、食べたりします。

「ほんまのシュークリームが食べたいもんや」・・・・関西弁を話す石原裕次郎、初めて見ましたが、違和感ないです。

まだまだ若い石原裕次郎、声が甲高いのですね。

そして、ひとりになるとやはり孤独になり、涙を流したり、えんえんとひとりごとを言ったりします。

ハワイ近くに来たときに、ラジオから流れる曲、『王将』・・・。

 映画の終わり方がまたいいのです。

家族の反対を押し切って出航したものの、家族は、捜索願いを出さざるを得ない。

そんな時にサンフランシスコに到着。家族との・・・・なんてことは描かず、昼夜、ヨットで暮らした青年にあるのは

ひたすら眠い・・・・そこで映画は終わるのです。

 冒険・・・という言葉から想像される華やかさを一切排除してしまった潔さに感心です。

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