明るい瞳

明るい瞳

Les Yeux claris

2007年9月9日 渋谷・シアターイメージフォーラムにて

(2005年:フランス:87分:監督 ジェローム・ボネル)

 この映画は、宣伝といい、説明といい、「ちょっと変わった女の子のおとぎ話」という言い方をされているのですが、わたしは、ちょっと違った風に観ました。

 主人公、ファニー(ナタリー・ブトウフ)は、映画で見るともう「女の子」とは言えない女性です。

年齢不詳だけれども、決して若くはない。

行動や言動が、衝動的で、兄夫婦と同居しているけれど、かなりの厄介者。

この厄介者ぶりが前半、描かれますが、兄と兄嫁が、「厄介な妹」に我慢して我慢している様子なんか痛いです。

ファニーは一応、近所のお金持らしい家の家事をやったりしているけれど、どうもいい加減。

気まぐれで、怒りっぽく、かなり幼児的な行動をするのです。

 兄が、「病院に戻ったらどうだ?」というように精神病院に入っていたらしい。

ファニーは、兄や兄嫁に、ほとんどいやがらせのような事をする。

特に、しあわせいっぱい~~~を見せつける「他人」の兄嫁には・・・。

それは、死んだ父に愛されていたのかどうか・・・本当に愛されているのか・・・とにかくイライラしっぱなし。

 そして家を飛び出したファニーは父の眠っているドイツの墓を探しに、家出。

そこで出合うのが森の小屋でひとりで生活している、ドイツ人の男、オスカー。

 ドイツ語が出来ないファニーとフランス語が出来ないオスカー。

オスカーを演じたのは、ミュージシャンだそうですけれど、穏やかなような、人と上手く接する事が出来ないような・・・雰囲気を持っている。

 車のタイヤが森の道でパンクして困ってしまう所で、ファニーはひとりでなんとかしようとするけれど・・・この時、森の小屋が映って、次に小屋の横に立っているオスカーがぽつん、としている所がいいです。

何も言わずに、しばらく、じぃ~~~っと見ていて、おそるおそる近寄ってくる。

 手際よくタイヤ交換をしてくれたオスカーの家に、住むことにしたファニー。

でも、2人は言葉が通じない。通じないけれども、兄たちと暮らしているより、ファニーはのびのびとしているのです。

言葉でキンキンやりとりをすればするほど、イライラが高じるけれど、何かしたいときは、身振り手振りでオスカーに意志を伝えなければならないファニー。

言葉でなくて、身振りで、ピアノがあればピアノという音楽で、意志をどうにか伝えるところは前半と良い比較になっています。

明らかに、内心不満なのに、綺麗事を言う兄嫁と、なにかあるとすぐ妻の肩を持つ兄と、言い合いをして嫌がらせをしても、何も変わらないというか、何も良くならない。

ひどくなれば、病院へ戻れ!・・・家にいさせてあげているのに・・・何だその態度は!の繰り返し。

それに対して幼児的なイジワル、しかできない・・・少女というより幼児的なファニーなんです。

 オスカーとの出会いで、ファニーは何を考えたのか・・・映画はさらり、と終わります。

ファニーはオスカーと和気あいあいですか?というと、ぎくしゃくもするし、ヒステリーも起こす。

でも、森の小屋では、何事も穏やかにおさまってしまうのです。

だんだん、顔が明るくなってくるような、でも、まだ、不安はたくさん・・・という精神不安定な女性を演じたナタリー・ブトウフの歩き方がいい、というか見事。

怒ったように大股でずんずん、歩くのです。

スカートにスニーカーで、イライラしたように早足で大股で歩く・・・ファニーが歩くところをよく映すのですが後ろ姿に痛々しさとやりどころのない怒りが見事にあらわれていたのがとても印象的。

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