包帯クラブ
2007年9月9日 丸の内 TOEI①にて
(2007年:日本:118分:監督 堤幸彦)
包帯・・・というのは目立ちますね。
ここに傷があります、という目印。
この映画を観て、ついそんな事を思ってしまいました。
わたしのこの何年かの体調としては、「微熱」「腰痛」持ちで、これは包帯できないものです。
だから、周りからはわかりにくい。
自分がどんなに辛くて、精神的に辛くても、周りからはわからない。
だから、包丁で指を切った時、または首を捻挫して、首にギプスをまいていた時、「大丈夫?」とやたら周りが心配してくれるのに、とても微妙な感覚を持ちました。
切ったのも、捻挫も包帯まいていれば、いつかは治るもの。
でも、微熱とか腰痛というのは、医者から「治りませんね」と言われてしまったもので、精神的にどちらが辛いって、「治らない」と言われて、ずっとひとり、誰にも知られずつきあっていかなければならない具合の悪さのほうです。
さて、この映画の原作は天童荒太なので、「痛い」のを覚悟していったところがあります。
しかし、そこが堤監督、変化自在な映画を撮る監督なので、そうそうくら~い、絶望的な雰囲気は出していません。
全編、高崎でロケされた高崎映画でもあって、監督は色々な所をロケハンしたそうですが、映画の全ての条件を満たしているのが高崎だったと。
最初のシーンで観音像が見えて「高崎?」と思うのですが、ちょっと半端な都会。山もあるし、街もあるし・・・半分都会といった所です。
主人公は、ワラというあだ名の高校生(石原さとみ)は、両親が離婚して、母と弟と3人くらし。勉強が好きではなくて、なんとなく不満を持っている。別に死んでしまいたいっと思ってはいないけれど、「これから楽しいことがたくさんっ」という希望も持っていない。
包丁で手首を切ってしまい、病院に行って、屋上から・・・ふらふら・・・ってしてるときに「お。リスカ?」
声をかけてきたのが近くの高校に通う男の子、ディノ(柳楽優弥)
へんてこりんな大阪弁を話し、妙にハイテンション。変なやつ・・・・と思っても、「なんか傷があったら、包帯巻けばええんや」と鉄柵に包帯を巻く。「どや、これでええやろ」
包帯を巻いてもらった・・・・妙な気持になって失恋した友人、タンシオ(貴地谷しほり)に話すと、ぜ~んぜん話聞いてなくて、じゃ、失恋のブランコに包帯巻いてあげる・・・・そのアイディアが気に入った2人は「包帯クラブ」を作る。
パソコンが得意な浪人生、ギモ(田中圭)を誘ってホームページを作って、「傷ついた人に傷ついた所に包帯を巻き、それを写真に撮って送る」というシステムを作る。
変人・ディノが加わり、中学生の時仲よかったリスキが加わり・・・・5人は依頼のあるところに包帯を巻く。
しかし、ワラ、タンシオ、リスキ・・・実は仲が良かったテンポという女の子(関めぐみ)がいるのですが、ひとり上昇志向で今は縁がないのが、気がかり。
ディノはディノで、言動や行動が時々おかしい。やさしいお兄さんタイプのギモも、色々あるのです。
5人は様々なところに包帯を巻く・・・・・神社、学校、駅、銅像・・・・喜ばれる事が多くて嬉しくなるけれど、しかし、ネットには「偽善者」「社会の迷惑者」と書き込み、警察に通報され、学校にも密告される。
さて、包帯クラブはどうなる?
この映画に出てくる10代の子って皆、何かしら持っていて、端から見たら大したことなくても、本人にとってもとても深い傷があるのを、他の人を包帯でなぐさめようとしているのがだんだんわかってくるのです。
やってて楽しい、誰かが喜んでくれて、慰められてくれて嬉しい・・・そんな気持を壊すものを実は抱えている。
他人の痛みを知る、というのはとても難しい・・・・ということですね。
しかし、痛みを乗り越える、治すことが出来るのも若いうちだけなのかもしれません。
この映画は、そんな「若さの快復力」の映画でもありました。
石原さとみの無愛想な感じ、妙にハイテンションだけど何か隠している柳楽優弥・・・他、演技が上手いですね。
いきいきとしたり、がっかりしたり、困惑したり、涙を流したり・・・何とかしようと頭をひねったり・・・「傷に包帯を巻く」という行為がとても印象的な、少々毛色の変わった青春映画・・・救いなんてない、とは言わないところが好きなところです。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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