サイボーグでも大丈夫

サイボーグでも大丈夫

I'm a CYBORG, but That's OK

2007年10月5日 新宿武蔵野館にて

(2006年:韓国:107分:監督 パク・チャヌク)

 復讐3部作を作ったパク・チャヌク監督の新作映画は、ラブ・コメディでした。

といっても、普通の恋愛もの・・・なんて作りません。

色鮮やかで、奇抜な発想、奇妙な人々・・・精神クリニックで繰り広げられる夢物語。

 主人公のヨングンという少女は、最初工場で働いていますが、まっ赤な服を着てラジオを放送にあわせて組み立てる・・・そんな世界からして、奇抜な世界です。

大好きなおばあさんが、頭がおかしいと家族から無理矢理引き離され、それからヨングンは自分をサイボーグ、機械仕掛けだ・・・と思いこむようになり、工場で、「充電しなくては・・・」と行動したことから、精神クリニック送りに。

 サイボーグだから、人間のように食事はしない。

タッパーに電池を持ち歩き、食事の時間は電池を舐めている。ベットにある蛍光灯に叱りつけ、飲み物の自動販売機にねぎらいの言葉をかける。

だんだん体力が衰退していくヨングン。

 そこには、色々な人がいるけれど、同年代の男の子、イルスン・・・は、盗癖があるためクリニックにいるのですが、物を盗むのではなく、本人いわく、「木曜日」「卓球のサーブ」「あいさつ」・・・そんなものを盗んでは、「伝達!」とハンドタッチをして返す。

イルスンは、ヨングンのことを最初観察しているのですが、ヨングンの行く先々・・・ちょこまかちょこまかしている様子が可笑しい。

 ヨングンは、おばあさんを連れていってしまった「病院の白い服を着た人たち」ホワイトマンを殺したい・・・と願っている。

しかし、自分はサイボーグなのに・・・同情心がある。殺せない・・・・親しくなったイルスンに自ら「盗んで欲しい」と頼むのは「同情心」

 イルスンは、睡眠飛行法を盗み、ヨーデルの歌声を盗み・・・なんとかヨングンをなぐさめようとするけれど、「わかった。同情心を盗むよ」

 という具合に、悪夢の中の復讐劇なのでした。

あくまでも、ヨングンとイルスンは、純真無垢な表情をしている皮肉。

悪いことをしている、という自覚は若い2人には全くありません。

むしろ、良いとされることが、自分にとっては悪徳なのだ・・・と思いこんでいる。(悪徳が絵本になっているのがすごい・・・なんともメルヘンタッチの猫の絵に色々な悪徳=美徳が描かれている)

それを、変と描かず、色鮮やかな色紙で折り紙を作り上げたような「立体的な色の世界」を貫いているところが、とてもユニーク。

サイボーグ少女、ヨングンは充電すると足の指の爪が5色にピカピカ光る。

 イルスンのおかげで充電されたヨングンは、クリニックの人たちを殺戮する。口からは弾倉が、指先が銃口となって、美しい残酷な復讐妄想・・・ここは、残酷というより、シュール。

 ヨングンが食事をする・・・というそれだけで、この2人の恋愛は成就しているのだと思う。

ヨングンとイルスンにあるのは「自分の存在理由探し」であって「恋人さがし」ではないのです。

お互い「好き」という言葉は一切ないのに、ヨングンの為に奔走するイルスンの姿は「恋している青年・・・ただし、恋の自覚全くなし」です。

 2人の求めているものは違うけれど、2人でしか出来ないことがある。

恋愛っていうのは意外とそんなものかもしれませんね。 

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