2007年10月14日 渋谷 ユーロスペースにて

(2006年:日本:110分:監督 廣木隆一)

 原作は馳星周の短編集なのだそうで、ヒリヒリとした甘えのない世界ではあります。

ギリギリの人々でもあります。

しかし、映画から受ける印象は、完全にではなく、どこか、一点、ゆるい・・・許しがある。

 本来だったら許されない事であっても、そこまではこの映画では突き詰めない。

裕福な生活なのに、携帯の出会い系サイトから、売春を始めてしまう28才の主婦、聡子(美元)。

家族を大事にしている夫(大森南朋)

ひょんなことから、聡子と出会い、売春の事実を知って、どうにか辞めさせようとする青年、稔(高良健吾)

聡子につけいり、ポン引きとなって売春から抜け出せないようにしてしまうヤクザの田口トモロヲ。

出てくる人はこの4人といってもいいでしょう。

 聡子の売春は、ヤクザによってネットに情報が流れ、夫の知るところにもなってしまう。

しかし、その事を責めようとしない夫。保身なのか、臆病なのか・・言い出す事が出来ない。

聡子も、ヤクザから離れられないと思い知らされて思い悩むようになっても、もう、売春からは逃れられない。

母を助けようと父を殺した事で少年院に入っていて、今は新聞配達員をしている稔は、聡子に惹かれるけれど、聡子に見ているのは、助けたのに、自分を捨てていった母の姿、というねじれたものを持っています。

 聡子を演じた美元さんという人はモデルだったそうで、スタイルは良いのですが表情が薄いのですね。

だから、エロティック・・・という意味でも薄くなっています。

反面、稔を演じた高良健吾は無口ながらも、その目の光はギラギラしている。『サッド ヴァケイション』でも反抗期の高校生のギラギラした目、というのが印象的でした。

そして、最初は紳士で、だんだん本性をあらわしてくる田口トモロヲの演技が、ねちねちねち~~~としていて、目は子犬のようにつぶらなのに・・・・だからこそ、怖いのです、この役者さんは。

 軽い気持の行動(売春)がとんでもない事をひきおこしてしまう悲劇・・・というより、それに巻き込まれてしまう人々の心の葛藤というのが映画のメインで、決して罪と罰の映画ではありません。

そこが、良いところでもあるし、映画をひきしめない、どこか薄いイメージになってしまった味付けの仕方、なのでしょう。

廣木監督は、精神的に不安定な人を描いたとしても、いつも、とことん追いつめない・・・救いのようなものを信じているのではないかと思います。

 面白かったのは、稔の働いている新聞配達の店に深川栄洋監督の映画『狼少女』のポスターがはってあったところ。

わたしは『狼少女』が気に入って、ポスター持っているので、あれ?なんてすぐ気がつきました。一瞬なんですけどね。

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