サウスバウンド
2007年10月15日 有楽町 シネカノン有楽町二丁目にて
(2007年:日本:117分:監督 森田芳光)
森田芳光監督は監督デビューしたころのユルユルさ、、、を前作『間宮兄弟』あたりから復活させているような気がします。
この映画、一番面白いのは、主人公の少年が長男なのに「二郎」だと言うことで、それは父が「一郎」だから・・・
そこからして、普通じゃない、と思うのですが、父、一郎(豊川悦司)は、80年代まで学生運動で暴れまくっていたという過激派のアナーキスト。
今の時代、学生運動時代の理想やら、信念やら、理屈やらを振り回されても・・・平成の小学生の子供たち・・・幼い妹はまだ、「お父さん、過激派!」とわかってないけれど、小学校6年生の二郎は、「なんでこんな親なんだ・・・・」
最初は浅草に住んでいるのですが、国民年金を払わず督促に来ても、「じゃ、国民やめる、やめちゃおー」
仕事らしい仕事もせず、二郎から「お父さんが家にいすぎても困るんだよ・・・」
修学旅行の積立金が高い・・・と学校に殴り込み・・・・学校でも有名人な困った父。
二郎は二郎で、友人たちがどんどん変わっていってしまうのに困っている。でも、過激派父に言ったら何を言われるか、、、黙っている苦悩。父だったら、おおお、喧嘩か!闘え闘え!!!鉄パイプで殴るのは頭はまずいな。お勧めは膝の裏だな・・・なんて言う。
屁理屈をこね、理想に燃え、何かあったら戦えばいい・・・と非常にシンプルな思考のお父さん。
密かな繊細な友人関係のひび割れ・・・なんて、過激派父にはわかってもらえないのです。かわいそう~。
じゃ、母(天海祐希)はどうなのか、というと、実は「ジャンヌ・ダルク」と呼ばれたんだよな!という事実を知ってたまげてしまう二郎。
お母さんはお父さんを尊敬しているのよ。
裕福な呉服屋の娘でも、学生運動に身を投じ、実家とは縁を切っている。
家は喫茶店をやっているのですが、そこで、「詩の朗読会」なんてやっている・・・ってところもズレてておかしい。
妹の桃子と母の実家である呉服屋に遊びに行って・・・裕福さにびっくりしてしまう子供たち。
まぁ、これが今時の普通の子供の姿かな、と思うのですが、なんせ、お父さんは、学生運動時代の理想に燃え、ブルジョワ階級を憎み、プロレタリア革命を信じているのです。
そんな今の時代とのずれ、がユルユルとおかしい。
ひょんな事から、西表島に移住する事になった一家。
一軒家で、コミューンのような生活するんだよ・・・・とまた、子供たちには災難。
しかし、子供たちは、西表島の自然の豊かさ、小学校ののどかさ・・・に順応しはじめたとき、つきつけられた企業の土地に無断で住んでいる・・・という立ち退き要求。
島では、人のいいおまわりさん(松山ケンイチ)がいて、島の集合住宅に住むことをすすめるけれど、革命家の父と母。そんな権力には屈しません。どうなる、一家?
父、一郎は困った人かもしれないけれど、まがったことは大嫌いで、人の顔色を見るような姑息な事は大嫌いな正義感を貫く強さを持っている。
だからこそ、学生運動に身を投じたのだろうけれど、今時の子供の世代の理解を超えるもの。
それをどう理解していくか・・・という、父と母の世代、子供の世代の溝を埋めていく映画なのですね。
しかし、この映画、急に香港映画のように浪漫的、ロ~マンタ~イになるのです。
意外な結末といえば意外ですが、今の時代・・・理想郷というのは存在するのか?と聞かれれば、わたしは「ないと思う・・・」と答えると思うけれど、この映画は「あるっ」と言い切ったところが、いいですね。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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