ファラフェル

ファラフェル

FALAFEL

2007年10月20日 TOHOシネマズ六本木ヒルズにて(第20回東京国際映画祭~アジアの風~)

(2006年:レバノン:83分:監督 ミシェル・カンムーン)

 ファラフェル・・・というのはレバノンおよび中東で、ごく普通に食べられる日本でいうコロッケのようなもの。

但し、大きさは少し小さくて丸く、原料は大豆で、辛みがあるそうです。

 この映画はレバノン内戦終結から15年経ったレバノンの街でのある一夜の物語。

主人公の青年は学生だそうですが、夜、原付バイクを走らせて・・・友人たちとのパーティに出かける。

その途中でサンドイッチを買おうとした、青年に店の主人が、いきなりファラフェルを渡す。

 昔、ある村が貧しくて困っていたときに、天からファラフェルが降ってきた。それを食べて人々は生き延びた。

ファラフェルを油で揚げていると、時々、浮かばず沈むファラフェルがある。それこそが、「選ばれしファラフェルだっ」

店の主人はいきなり青年に「これは、沈んだファラフェルだ。君はこのファラフェルのような人物になるんだ」

 何が何だかわからない青年はパーティに行く。若い人たちがお酒を飲んで、ダンスに興じている。

なんとなく、場になじめない青年。

ひょんなことから、夜の街をバイクで走り回る事になる青年。

 青年はいわゆる無害な若者です。夜遊びする、といっても母や幼い弟をとても大事にしているし、友人たちにも親切で慕われている。

だから、友人が車ぶつけただろ、と言いがかりをつけられるちょっとした事にも、奔走することになるのです。

 大した事件がある訳ではない。パーティで綺麗な女の人と出会うけれど、大恋愛になるわけでもない。

夜の街を原付バイクで走り回る青年。

それは自分のためではなく、友人のためだったり・・・だんだん、青年自身、もうどうでもいいやって・・・気になって、疲れ果ててしまう。

そんなとき、ぽた、ぽた、ぽた・・・・と空からファラフェルが落ちてくる。

 レバノン内戦後、15年経って、完全な平和になったのか、というとなんとなく今のところ何も起きてない状態・・・が、ただ続いているだけ・・・平和なような・・・でも、何か不穏が空気が映画にずっと流れています。

 映画は一晩の物語ですが、朝を迎えない。夜のまま、終わります。

あっちで、あれこれ、こっちであれこれ・・・・に疲れた青年が家に戻ると、幼い弟がおねしょをしちゃった・・・とタバコを吸っていたりします。

大丈夫だよ・・・・と弟に寄り添っているうちに深い眠りにつく青年。

落ち着かないような、でも、家でじっともしていられないような・・・そんな気持がやっと落ち着いての眠り。

 青年は別に大活躍したわけではありません。むしろ、もっと人のいい不器用な友人が外で待っているのを忘れて、深い眠りに落ちてしまう。

青年と弟の穏やかな寝顔・・・普段の生活で劇的なことなど起きない。

日本だって、安全なような平和なような・・・でも、様々な問題を抱えている。ストレスがあって、不満があって、あきらめがある。

そんな中での、「生き延びるためのファラフェル」は深い安心の眠りなのです。

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