4分間のピアニスト

4分間のピアニスト

Four Minutes

2007年12月14日 シネスイッチ銀座にて

(2006年:ドイツ:115分:監督 クリス・クラウス)

 この映画は、なんといっても、ラストシーンのストップモーションの絵のインパクト!

まぁ、映画のネタばらしになってしまうから具体的には書けないのですが、今年観た映画の中で、これは絶対忘れない・・・というインパクトのあるラストシーンです。

 ピアノ教師として女子刑務所にやってきたクリューガーという年老いた独身女性。

刑務所でピアノ教室なんて・・・という反対を押し切り、生徒を集めますが、ひとり、殺人犯として、また刑務所内で何かと暴力沙汰をおこす問題児のジェニーが実は、ピアノの天才教育を受けており、才能もあることを知ったクリューガーはピアノをすすめますが・・・

 このジェニーという女の子は、野獣のような女の子なのです。

そんな人間が刑務所とはいえ、うまくやっていけるわけがない。

看守に注意されれば、やり返す、刑務所の中では孤立して、何かあればすぐに暴力で2倍3倍返しを繰り返す。

ピアニストは手を大事にする・・・というのがあるのですけれど、ジェニーは自傷的に手をボロボロにしている。

そして何よりも、その青い眼がいつでも憎悪でぎらぎらと光っている。

 マナーもなにもなっていない、ジェニーを厳しくしつけようとすれば「あんたの奴隷になるつもりはない」とそっぽをむく。

クリューガーは、優しいよりも、今までピアノで生き抜いいてきた厳しい女性。

2人の対立が始まります。

 この映画は老女と若い女の子の対決映画です。

全くいうことをきかないけれど、その才能を認めざるをえない。

しかし、ジェニーはクラッシックなどよりも、ロックなどをピアノで弾いてみせる。それが自分の音楽だ、と言い張る。

しかし、クリューガーは「(クラッシック以外の)下品な曲は厳禁」を言い渡す。

 頑固もの同士の対立なのですが、ジェニーは両親をなくして、引き取られた先で養父にピアノの教育を受けさせられ、天才少女・・・と言われたものの、悲惨な運命になり、精神はずたずた・・・そのあまりに起こしてしまった殺人。

精神がずたずたのまま、刑務所に放り込めば、戻るのか・・・というとジェニーはますます悪化していくようです。

それを、見抜くことができた、ピアノ教師クリューガーにも、苦い苦しい思い出がある。だからこそ、クリューガーはジェニーを甘やかすことなく、媚びることなく、導くことができたのだと思います。

結婚せずにひとりで生きてきた女と、ひとりにならざるをえない若い女と。

 クリューガーを演じた、モニカ・ブライブトロイはドイツの名女優。息子はモーリッツ・ブライブトロイ。

表情はかたく、めったに笑わず、贅沢もしない・・・しかし、芯が強くて、若い者を圧倒する迫力を持つ。

ジェニーを演じたのはオーディションで選ばれたハンナー・ヘルツシュプルング。

ピアノの演奏を吹き替えでなく、実際自分で演奏しています。

 さて、コンクールに出ることになったものの、周りの陰謀で、出られなくなるのか・・・という決断の時、起こしたクリューガーの行動は、罪なのかもしれない。

しかし、それをはねのける、ジェニーの4分間のピアニスト姿。

演奏の様子はあまり出さないかわりに、4分間のピアノを迫力で出したところが、すごいと思いますね。

そして、ラストのジェニーの眼。そこにあるのは、憎悪でなく「誇り」です。

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