Once ダブリンの街角で

Once ダブリンの街角で

ONCE

2007年12月17日 渋谷 シネ・アミューズ(赤)にて

(2006年:アイルランド:97分:監督 ジョン・カーニー)

 Boy meets girl.

もう恋愛映画の基本。

しかし、この映画では、正確にはGuy meets girl.なのです。

映画の中で、男性には名前がなくただのGUYであり、女性は、GIRLなのです。

名前を呼び合う・・というシーンはありません。

 恋愛は若い人だけのものではない・・・というのは頭でわかっていても、実際「大人の恋」というのはなにかと背負うものが大きすぎて、若い人たちの恋物語よりも、もっと夢物語なのが大人の恋のような気がします。

 アイルランドの街角で穴のあいたギターで弾き語りをするいい年をした男。音楽が好きだけれど、実際やっていけず、父の機械修理屋の手伝いをしながら、時間をみつけては街に立つ。

映画は、いきなり、前に置いたギターケースに入ったコインをこそ泥されそうになるところから始まります。

もう、お金ない人からもお金とっちゃう・・・そんな街なんですね。

 そして、Guyの前に女の人が立つ。チェコから家族で移民してきたGirl。

街で花売りをしたり、ハウスメイドの仕事を単発でもらったり・・・そんな女性ですが、男の曲をいい曲・・・特にオリジナルがいいと思うけど・・・そんなことから話をするようになった2人。

女性は、ピアノが弾けるけれど、家になはなくて、時々楽器店のピアノを弾かせてもらっている。

 掃除機が壊れたから直してほしい・・・と犬の散歩のように青い掃除機をひっぱってまた現れる女性。

 なんとなく、いい出会い?なんてほくほくしちゃうと・・・・・女性には、もう夫がおり、今はチェコにいて、子供までいるという。

男には、別れた女性がいて、なんとなくまだ未練たらしい想いを抱えています。

 どちらも、好きだから、つきあいましょう、結婚しましょう!とはならない、友情とも愛情ともつかない、でもお互い相手のことが気になって・・・でも、なかなか気持は伝えられない。

ただ、2人の間には音楽がある・・・というわけで、男性は、キーボードに女性を加え、バンドを作りデモ・テープを作ろうとします。

 恋愛関係にはならないけれど、音楽関係の絆は深まっていく2人。

言葉すくなで、気の利いたことなんか言えないけれど、男性はなんとなくいつも女性の姿を街の人ごみに探してしまう。

その様子がとても切ないのですね。

はっきり、つきあってとは言えないとわかっていても、強引に奪うなんてことはできないとわかっていても、どうしても目は街の人々の中にいるだろう女性の姿を探している。

 男性は比較的身軽ですが、女性の方は、母とまだ幼い子供と・・・養っていかなければならない・・・でも男性をもてあそぼうなんて、気持はない、そんな様子がよかったですね。贅沢はできないけれど、音楽があればいい・・・ピアノを弾いて、バンドでデモ・テープを作って・・・そんなことにほっとするような表情をうかべて、穏やかです。

 無事、デモ・テープは出来上がり・・・そしてどうなるのか・・・映画はここで終わります。

ぱんぱかぱ~~んと恋愛成就にはならないけれど、お互いを尊敬しあって、いたわりあうことができた・・・そんな人に会えた・・・それが嬉しい。そんな気持が一番に出ている映画で、重いものを背負いながらも、尊敬しあう2人の姿は、暖かくて、切なくて、そして、とても優しい・・・切なさと胸がホカホカするような気分になる、そんな「小さな小さな宝物」のような映画です。

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