ある愛の風景

ある愛の風景

Brodre/Brother

2007年12月18日 シネカノン有楽町二丁目にて

(2004年:デンマーク:110分:監督 スサンネ・ビア)

 もうもう・・・この日本語タイトル、つけたの誰?

原題はブラザー、つまり兄弟なので、何かインパクトのあるタイトルをつけなければならないのかとおもいますが、これは、よくない。

逆にどんな映画か、さっぱりわからなくしているし、映画を観て納得するようなタイトルでもない。

 それはさておき、日本ではめずらしいデンマーク映画です。

最初、どこの国の話かわからなくて、言葉はドイツ語みたいだけど、ドイツ語ではないし・・・うーん・・・なんて思っていたくらい、わたしは予備知識なしでこの映画を観たのです。

 アフガニスタンに派兵された夫が、ヘリコプターが撃墜されて死んだという連絡が妻の元に届く。

子供はまだ、幼い娘が2人。

夫の弟である男は、立派な軍人として両親親戚から鼻が高い存在である兄とは対照的に、銀行強盗をやって刑務所に入っていたような・・・そんな弟です。

 夫の死、兄の死・・・義弟はなにかと兄嫁と娘たちの世話をする。

最初は、苦手だった不良の弟にだんだん、親しみを感じてくる妻と娘たち。

 しかし・・・・夫は、生きて捕虜にされていた・・・・そして生還。

とたんに、不穏な空気が流れだす一家の崩壊を描いています。

 夫は、捕虜になっていても、家族に会いたい・・・と思う一念で、やむにやまれぬ「罪」を犯す。罪を犯すか、自分が死ぬか・・・そんな瀬戸際での狂気を体験してしまったら、もう、昔のやさしい夫、パパには戻れない。

しかも、不出来な自分の弟が、自分の妻や娘たちとうまくやっているのに、自分はもう変わってしまった・・・誰のせいでもないことで変わってしまったことに苦しむ家族。

 とはいえ、妻と弟はあくまでも家族としてつきあっているだけなのですが、変わってしまった夫には、もう、「夫の座」を乗っ取られてしまったようにしかみえない。誰にも言えない罪を犯してまで、戻ってきたのに「戻れない」・・・・そんな苦しみです。

 敏感に反応するのが娘たちで、最初はパパ大好き!だったのが、生還したあとは全く近寄らない。

特に長女がよかったですね。妹はまだまだ小さくてよくわからないけれど、長女はなんとなく大人たちの不穏を察している。

でも、それを言えなくて、ポロポロポロポロ涙を流す・・・。

 夫はとうとう精神の破たんを迎えますが、そこで、やっと妻に「話す」・・・それだけでこの家族に一筋の光があたったように思います。

 なんでもかんでも言いたいことが言えれば楽なのかもしれませんが、この映画の場合は言えないのです。

戦争というのは、とんでもない「罪」をばらまく・・・・そんなことをある家族の風景で描いたところが大人の映画。

この映画に「罪」は描かれるけれど、「罰」は描かれない・・・そんなところにも、この映画のうまさがあると思います。

 ハリウッドでリメイクされるそうですけれど・・・やめたほうがいいと思う。

ドラマチックなストーリーではあるけれども、この映画の底にあるのは、考えさせる、ということであって、「感動させる」ということではないからです。 

0コメント

  • 1000 / 1000

更夜飯店

過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。