迷子の警察音楽隊

迷子の警察音楽隊

Bikur Ha-Tizmoret/The Band's Visit

2007年12月30日 シネカノン有楽町二丁目にて

(2007年:イスラエル:87分:監督 エラン・コリリン)

第20回東京国際映画祭グランプリ受賞

 この映画のアイディアのうまさは、なんといっても「警察の」音楽隊だ・・・というところだと思います。

わたしは、長年、原付バイクの違反で警察の方とですねぇ・・・接してきたので、もう、警察に言い訳、通じません!国家権力には逆らえません!って警察恐怖症です。

なにもしていなくても、パトカーとか白バイとか見ると・・・・・わぁぁぁ・・・なんか悪いことしちゃったような・・・そんな気分になり、とにかく逃げ出したい衝動にかられます。あの制服がねぇ・・・・。

 ところがこの映画は、ただの警察ではなく、イスラエルの文化センターでの演奏を頼まれたエジプトの警察音楽隊が、イスラエルで迷子になってしまう顛末。

8人の楽団員は、きっちりと水色の警察官の制服を着ている。

しかも、エジプトとイスラエルは隣国同士であったがゆえに、紛争などあるわけで、いきなり「エジプトの警察官」がやってきたらそりゃ、どうしていいか、わかりません・・・・ってことになるでしょう。

 空港で誰も迎えに来てくれない・・・8人の皆さん。ガランとした風景の中に、ぽつん。

隊長のトゥクィックは「大使館に連絡しましょうよ・・・」というのを、「我々には地図がある。25年間、我が警察音楽隊は自力でやってきた。だから自力で目的地へ向かう」とおかたい。

 バスで目的地に向かいますが、言葉わかんなくて、な~んにもない町にたどりつく8人。

 もうこの映画は、広々としているといえば聞こえがいいが、言い方帰ればな~~~んにもないところというのが出てきます。

 隊長は、とりあえず、見かけた店で道を聞きますが、そこで「間違い発覚」

隊員の若い者は、腹へった~~~~~とか言い出すし、そこは食堂なので、お昼を食べることに・・・

ところが、若い女主人、ディナは、ぺろっと「もう、バスないわよ」・・・・そこで、ディナと店の若者の家に分散して、一晩泊めてもらうことになりますが・・・・・どうも・・・いきなり警察の人が泊まりに着たことで、沈黙しかない、気まずいムードが、めんめんと続いてしまうんですね。

 若い警察官は、5年も警察学校で学んだのに、楽隊だよ・・・と不満げだし、遊び人だしで、それなりにエンジョイしてしまいますが、ディナに誘われた、隊長さんは、あくまでも慇懃に丁寧にお堅い。

奔放な感じのディナは、そんな隊長さんに親しみを抱き、あれこれと、話をするけれど、返ってくるのは「お堅い返事ばかり」

 狭い、何もない街で、楽しみなんかないけれど、それなりに小さな小さなドラマがあって、ぎこちないけれど、だんだん親しみを持つようになる団員たち。

携帯電話なんか、持っていないから、ある若者は毎晩、公衆電話の前で彼女からの電話を待っているという。

団員のひとりが、大使館にこっそり電話しようとすると・・・・公衆電話のとりあい・・・とか・・・。

 なんともいじらしい人々のいじらしい姿を丁寧に追った映画で、そうそう人間同士、すぐに親しくなれないという突き放したところと、でも、なんとなく、お互いのいじらしさがわかってくるんだよね・・・っていう部分の出し方がとても可愛らしい。

 そう、この映画はとてもいじらしくて、かわいらしい・・・・子供や動物がかわいらしいというより、いい歳をした大人たちのいじらしさ・・・そんなものを、すくいあげていくような・・・そんなかわいい映画なんですね。

 この映画は、2007年東京国際映画祭でグランプリをとりましたが、カンヌ国際映画祭他、たくさんの映画祭で評価された映画です。

イスラエル・・・というと、中東でテレビで見るのは悲惨なテロや戦争や紛争・・・そんな風景だけじゃないんだよ・・・というのを見せてくれるのが、映画、なのです。 

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