夜顔
Belle Toujours
2008年1月3日 銀座テアトルシネマにて
(2006年:ポルトガル=フランス:70分:監督 マノエル・ド・オリヴェイラ)
自然界最大の謎は「女」である。
アンリは笑いながらそう言う。
びっくりしましたね。新年から(このタイミングは個人的にたまたまなのですが)・・・
世界最年長の映画監督 マノエル・ド・オリヴェイラ監督。今年、99歳!
「女はわからないなぁ~~」と、10代の恋に恋する恋気分、または、好きな女の子に声かけられなくてひたすら妄想キングになっている男の子でなく、恋愛を経験して・・・の20代、30代でなく、90代がそう言うところにこの映画のすごさがあります。
以前、オリヴェイラ監督の『アブラハム渓谷』を観たときに、う~~~む、監督からしたら、14歳も20歳も30歳も40歳も・・・ぜ~~~んぶひっくるめて「若い女」なんだなぁ~と感心したのですが、この映画で出た答えが「わからない」だったとは・・・。
一応、タイトルおよび献辞があるように、ルイス・ブニュエル監督の『昼顔』の38年後を描くのですが、ドラマチックな物語が描かれる訳ではありません。
昼は高級娼婦、夜は貞淑な妻・・・という二重生活を描いた『昼顔』
ミシェル・ピコリ演じるアンリは、もう70代。
クラッシック演奏会で、見つけたあのセヴリーヌ(ビュル・オジェ)
アンリはひたすらセヴリーヌを追いかけとうとう食事を共にする・・・まで行くのですが、セヴリーヌは昔の事を一切、否定し、語らない。
セヴリーヌはもう夫は他界しているらしいけれど、アンリの「誘い水」には一切乗らない。
アンリは何を知りたいのか・・・もう、自分は恋をする年でなく、別にセヴリーヌをどうこうしようなんて思わない。
でも、アンリは、あの昔のセヴリーヌの気持を、知りたいのです。
何故、どうして・・・その後どうなった・・・セヴリーヌは頑なですが、アンリが夫に自分の秘密を話したのか・・・という事を聞きただすけれど、今度は、アンリがそれに答えないのです。
答えなんてないのではないでしょうか。
欲望とは何か・・・アンリは、バーで若いバーテンに昔話をしながら、女の欲望の深さを語ります。
若いバーテンが、これが、またいいのですが、「わかろうとしない」のです。
話を聞いて、ふんふん、そうですか・・・と言うけれど、若いながらも、熟練と思われるバーテンは、何も言わない、答えない。
言えばわかるのか・・・というものではないだよ・・・ということがわかっているのが、実はこのバーのバーテンだと思います。
映画は何とも言えない苦い印象を残して終わります。
別に誰が死ぬ訳でもない、大恋愛がある訳でもない、愛を叫ぶわけでもない。
しかし、欲望っていうのは、「言葉にならないもの」なのだ・・・ということが、わかる映画。
スタンリー・キューブリック監督の遺作『アイズ・ワイド・シャット』は、キューブリック監督最後の性欲なのだ、と誰かが書いていましたが、いや・・・オリヴェイラ監督はさらにその上を行っていますね。
だって、堂々と「わからない」だもの。
これからもますます、映画を作って欲しいと思ってしまいました。もう、オリヴェイラ監督の話を聞くような気分で作った映画をまた観たいです。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
0コメント