次郎長三国志 第三部 次郎長と石松

次郎長三国志 第三部 次郎長と石松

2008年1月10日 東京国立近代美術館フィルムセンターにて(生誕百年 映画監督 マキノ雅広(1)

(1953年:日本:88分:監督 マキノ雅弘)

 わたしは清水の次郎長の話を全く知らないので、この九部作を一気に上映するのを観るかどうか・・・わかるのかな・・・と半信半疑で最初は観ました。

一日、三部ずつ、三日間かけて上映したのですが、第一部にあたる『次郎長 賣出す』と第二部『次郎長初旅』は、昼間仕事で観られず、これは解説によると清水の次郎長一家成立までのお話。

第三部から観たわけですが、ここから、いろいろなキャラクターがどんどん投入されていくのですね。

次郎長親分が、なんでも解決!というワンパターンにはならず、むしろ、子分たちの魅力を話の中心にもっていく・・・その展開ぶりに、これから驚くことになります。

 さて、なんといっても、第三部では、森の石松(森繁久彌)と追分の三五郎(小泉博)、そして、旅の壺ふり姐さん、投げ節のお仲(久慈あさみ)の3人がとても魅力的な新キャラクターなのでした。

 次郎長親分一家と別れた森の石松は、なんだか大勢のやくざに囲まれている三五郎を助っ人。

ここで、腕っぷしは強いものの、あわてもの・・・な石松に・・・

「お~い、この財布、おとしてないかい?」とのんびり言う三五郎。

「あっ、俺のだっ!」

「うん。じゃ、俺が預かっておく・・・」とちゃっかり者の三五郎。足を斬られて動けなくなってしまったところ、石松は追っ払ってしまう。

 石松は、腕っぷしが強くて、頼りになるけれど、極度のあがり症でもあり、吃音・・・言葉が出てこないのに対し、口八丁手八丁の女たらしのいい男、三五郎。

 投宿した温泉宿の賭博場で、出会った壺ふり姐さん、お仲。

「よござんすか?よござんすね?・・・・勝負っ!」・・・・・・・・・・カッコイイ・・・・・・

石松も三五郎も、いちころ・・・です。

久慈あさみさん、という人は宝塚の男役で有名だったそうで、背が高く、着物の着こなしも粋で、はすっぱな口調がまたかっこいい。温泉で、入浴シーンあり。それを見ちゃった2人。

 不器用で口べたで、単純な石松と、「女は惚れるもんじゃないぜ、惚れられるものだぜ」「女難は慣れてらぁね」と余裕しゃくしゃくの三五郎の掛け合いが素晴らしく、面白いのです。

 でも、さすがの三五郎も、お仲にはふられてしまう。酔った勢いで「好きよ」なんて言われた石松は、当然ながら・・・

 三五郎は、一匹狼的な存在で誰の子分にもならない。行った先々で女にもてて、ちゃっかり利用してまた旅にの繰り返し。

当然ながら、あちこちで恨みをかっていてもどこ吹く風。

 正反対のような石松と三五郎の共通点は「お互いどこか憎めない」というところなんですね。

もちろん、お人よしの石松が結局いつも三五郎に利用されてしまっても、なんだかんだ言って2人は気が合う。

 森繁久彌の石松のなんともいえない存在感・・・そして弁舌さわやかな美しい顔立ちの小泉博。

小泉博さんは、もとはアナウンサーで、俳優に転向したそうで、実にしゃべりが流暢なのはそのせいでしたか。

股旅の姿がとてもきれいな2人。

 反面、次郎長一家は、地元清水港をめざしているうちにもめ事に巻き込まれるけれど、次郎長親分の見事な采配でめでたしめでたし。

 このシリーズ、もちろん役者の魅力というのもあるけれども、驚くのは、セットの奥行の広さ。

京都をハリウッドにした・・・といわれるマキノ監督のこだわりが随所に見られるところも魅力。素晴らしい美術ですね。

そして粋なセリフがポンポン飛び出す、脚本のうまさ。

ちなみにこのシリーズ、第九部をのぞいて、助監督は岡本喜八監督でした。 


***追記***

「次郎長三国志」の中で最高傑作と言われる第三部が、私が一番最初に観た次郎長シリーズでした。森繁久彌のすごさねぇ・・・

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