次郎長三国志 第六部 旅がらす次郎長一家
2008年1月12日 東京国立近代美術館フィルムセンターにて(生誕百年 映画監督 マキノ雅広(1)
(1953年:日本:104分:監督 マキノ雅弘)
さて、前回、殴り込みに成功したはいいけれど、ここがやくざ稼業の悲しい身。
奉行所からは、殺人の凶状持ち、つまり指名手配となって、旅から旅へ・・・・どこへ行っても凶状がでまわっているから、誰もかくまってくれない。
しかも、前回、途中から次郎長の身を案じた女房のお蝶(若山セツ子)が、病に倒れ・・・・・
冒頭から、暗い雰囲気が続いて、これでもか、これでもか・・・・とつらい様子が描かれます。
皆、あまりの逆境に号泣・・・・・・
ここでなぜか、急にそれまで口べただった石松が、「なんでえ、なんでえ!!!!!!」とべらべらしゃべりだすのですが、眼を斬られてなぜか、すらすらしゃべれるようになってしまった・・・なんてところはほほえましい。
昔、助けた相撲とりの久六はいまでは親分となっていますが、どうも、表向きは歓迎しているけれど・・・奉行所とも通じている・・・らしい・・・という陰謀がうずまく。久六がいつ、何をするかわからない、という不安の出し方がうまいですね。
昔のよしみで、泊めてくれる親分もいるけれど、懸賞金までかかっては・・・・・どこもあぶない・・・というわけで、小松村の七五郎という男の家に隠れることに。
ここで、新たなキャラクターとして救世主のように出てくるのが、七五郎の女房、お園(越路吹雪)
これが、度胸のすわった女房というか、ほとんど姐さん肌の正義感の強い、得意技は槍。ぽんぽんぽんぽん・・・言いたいこと言うけれど、なんだかんだいって次郎長一家の肩入れをする。
また、お仲さんも救世主のように現れる・・・・いや、本当にお仲さんがいなければ次郎長一家野垂れ死にです。
金のない七五郎の家・・・・食べるものがなくて、仕方なくにわとりを・・・ってところで、元坊主の法印大五郎(田中春夫)の珍妙なお経とかね・・・暗いムードの中でもユーモアは忘れないところがいいです。
そして七五郎の家に、子分志願の少年が現れる。これが、若きというかまだ、少年の長門裕之。
なんとか清水に戻れば・・・・というところで終わっています。
このシリーズはチャンバラがあったり、女房お蝶が死んでしまったり・・・というシーンがあるわけですけれど、チャンバラで原則血は出ません。ここがお約束。
そして人が死ぬその瞬間を映さない・・・という配慮があるんですね。のたうちまわって死ぬ・・・というありがちなことは避けているんですね。そこら辺を貫く美学がよくわかる一編です。
***追記***
マキノ監督の映画の中では、やはり「次郎長三国志」が白眉だったと思うのですが、
この時、昼、働いて、夜はフィルムセンターに通いつめるという生活を一か月続けたら
身体壊して寝込んだ覚えがあります。今、思うとよく言ったよね、半分、意地になってたかも。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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