捨てうり勘兵衛
2008年1月19日 東京国立近代美術館フィルムセンターにて(生誕百年 映画監督 マキノ雅広(1)
(1958年:日本:94分:監督 マキノ雅弘)
何気なく足を運んだこのマキノ監督特集。
おもしろ~~いなんて、喜んでいたら、とんでもない世界に足を踏み入れてしまったことに今さら気がつきました。
マキノ監督は、長編映画を「260本以上」作られているそうですが、正確な本数が把握できないくらい多い・・・アメリカの映画ギネス・ブックでも200本以上長編映画を撮った監督はいない・・・そうで・・・有名な映画、有名なシリーズはあるかもしれませんが、「これがマキノ監督映画だ・・」みたいな事書いたら、サイレント、活動写真時代から今にいたるまでの熱烈で博覧強記なファンの方々からしたら、「とんでもないナマイキな言い草」であります。
セルゲイ・パラジャーノフ監督は不遇な監督で、生涯で、長編映画は4本。その分、その4本を観て、ああだ、こうだ・・・といえるのですが、マキノ監督はあまりにも「本数が多すぎる」のです。把握なんてできません・・・・ってことに気がついた次第。
なので、最初に言い訳・・・わたしはあくまでも「何も知らないマキノ監督素人観客」です。どんなに観たとしてもいつまでたっても素人でしょう。
間違いや勘違いがあったら、そこらへんはびしびしと教えていただきたいと思います。
とはいえ、マキノ監督の映画の素晴らしさは、そんな「ど素人」が観ても、大変、楽しい~~~~ということですね。
映画の冒頭はくず屋が酔っ払って歩いているところです。
そこへ、浪人が話しかけて、「この財布はいくらで売れる?」と聞いてきます。
くず屋ですから、びっくりしているところへ「うん。この財布はお前にやろう。そのかわりお前の家に居候することにする」「?!」
という訳で、事情があって名字は言えないが、勘兵衛(大友柳太朗)が、長屋におしかけ居候に・・・ってところがえらくテンポよくスピーディです。
観ている方も、あれ?あれ?あれ?と思うくらいころころと話は転がっていきます。
大友柳太朗演じる浪人は、長屋の人々にはえらく低姿勢です。いばったりはしないけれど、「お侍さんがいきなり長屋に」ということでパニックになる長屋の人々。
(くず屋は、自分の家は汚いからとんでもない・・・と言いますが、行ってみると「本当に汚い」・・・)
日々食べるお米にも困るような長屋の暮らし・・・そこで、勘兵衛は「喧嘩ひきうけます」という商売を始めます。
喧嘩があったら、色々、オプションをつけて、うん、この程度だったらこの値段で喧嘩しましょう・・・と助けたのが、娘歌舞伎の花形役者、中村鶴吉(大川恵子)
それだけ勘兵衛は、強い・・・ということですが、木の札を首にぶらさげて喧嘩商売しに行く・・・ってところがとてもユーモラス。
だんだん、長屋の人たちも勘兵衛がボス・・・のようになり、勘兵衛の一声、でわああっと団結したりするんですね。
その辺の呼吸も、あくまで軽くユーモラスです。
しかし、何故勘兵衛は、浪人の身なのか、助けた鶴吉をかくまうことになってから敵対する人々・・・そして鶴吉はだんだん勘兵衛に惹かれていくけれども、そこら辺は妙に頑なで、それはなぜか?
これ、全部ひっくるめて大団円になってしまうところ・・・飽きることなく、わたしはあれあれあれ~~とみいってしまいました。
勘兵衛の強さの出し方・・・そして、見事な殺陣・・・重心のぶれない殺陣は舞踏的です。
勘兵衛や長屋のやりとりは、軽妙洒脱であっても、どこか影があったり、鶴吉が、勘兵衛への恋心をつのらせて、告白しようとするあたりのしっとりとしたいじらしい悲しさのようなもの・・・ただただ笑って観てるだけではすまなかったところも、見ごたえありますね。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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