空の穴

空の穴

2008年1月17日 DVDにて

(2001年:日本:127分:監督 熊切和嘉)

 この映画はずっと観たいと思っていました。

寺島進さん主演だから・・・それだけですが、見逃していたのです。

 しかし、これは後に『アンテナ』『フリージア』と好きな映画を撮る熊切監督だと知って・・・おお、観たいなぁ。

 そして、

この映画始ってからの発見って多かったですね。知らなかったわ・・・っていうもの。

まず、これは第10回PFFスカラシップ作品であること、寺島進さんの相手役が、菊地凛子でこのときはまだ、旧名の菊地百合子。

 恋する男・・・寺島進。

なんといってもこの映画は恋愛映画です。

北海道の人気のないドライブイン「空の穴」をやっている独身男、市夫が寺島進さんです。

黙々と厨房に立っているかと思うと、キャベツについた青虫にいきなり、わっとか言ってびびってしまう・・・そのあたりの呼吸がね。

 あてのない旅を男としているものの、見事に置き去りにされ、空の穴に身を寄せることになった女の子、冴子(菊地百合子)

だんだん、冴子が好きになっていく・・・そんな様子を、寺島進さんが、時に寡黙に、時に饒舌に、時にすがりついて・・・といった風になんとも言えない男の味を出していました。

ひとことに、ただの独身男ではすまない、その表情の豊かさとうまさ。

 ただ、冴子を演じた菊地百合子は、なんとも空虚で、地面に足がついていなく、気難しく、それでも可愛いという、これも難しいところですね。

 ふらり・・・と現れた女だから、いつまた、ふらり・・・と出て行ってしまうかもしれない・・・そんな予感をいつも出しています。

出会いもなく、好きになったらもう、たまらない、不器用さ丸出しの「恋する男」というのが、なんとも微笑ましくも痛々しく、そしてたまらないほどいとしくなるのです。

 男だったら土下座できないのかっ!と置き去りにしたいいかげんな男をなじる市夫ですが、出ていこうとする冴子を、なだめたり、すかしたり、怒ったり、懇願したり、しまいには土下座して・・・恋する男(または人)って格好いいもんじゃない・・・そんなことを思うのです。

滑稽で、みっともなくて、恥ずかしくて、でも、好きだから・・・「また、ひとりにもどるのはつらいんだ」という台詞を力むことなく言える寺島進さんは凄いですね。その時の、背中と、握りしめた手。

 ただ冴子はそんな市夫が鬱陶しい・・・と、ちらり、ちらりと表情に出すそのタイミングも納得といえば、納得。

失恋したときに、胸にぽっかりと穴があいたようだ・・・と言いますが、雨があがった青空を映す水たまりにうずくまる市夫の影はまさに「空の穴」

人を好きになることは、とてもつらいことでもあるんですよ。でも、かすかな希望のかけら・・・を残したところがいいですね。 

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