弥太郎笠

弥太郎笠

2008年1月20日 東京国立近代美術館フィルムセンターにて(生誕百年 映画監督 マキノ雅広(1)

(1960年:日本:96分:監督 マキノ雅弘)

 これは『喧嘩笠』のような、大川橋蔵のかわりに、中村錦之助をもってきたようなものですが、設定は同じではないですね。

「りゃんこの弥太郎」と呼ばれる若いやくざ、弥太郎は、三年ほど他家の客人となっています。

りゃんこ、というのは大・小両刀を持っている侍のことで、弥太郎はもとはといえば、旗本の息子。

そこの親分のひとり娘がお雪(丘さとみ)。お雪は弥太郎にぞっこんなのですが、弥太郎は謙虚な若者、となっています。

 世話になっている親分は、後添えをもらおうとしていますが、どうもこの女が毒婦なんですね。

それを知ってしまった弥太郎は、もと友人の役人(東千代之介)に相談しますが、このことから、親分は祭りの晩、どさくさにまぎれて殺されてしまう。

 とたんにひなびてしまった家をなんとか立て直そう、そして、残された娘を助けようとする・・・弥太郎。

 弥太郎が旅の時に出会うのがいかさま壺ふり師の千秋実なのですが、弥太郎がおかたいイメージのところ、なんだかんだいってついてくる・・・その掛け合いのような2人がいいです。

もう、千秋実さんがスクリーンに出てくると、ホッとした空気が流れる・・・大したものです。

 しかし、どんどんお雪は追い詰めれられていき・・・また、祭りの晩・・・・弥太郎は罠にはめられる・・・

 マキノ監督はインタビューで祭りのシーンを好む・・・と話されていて、普段、余裕のない貧しい者が自由に遊べるのが祭りなんだ・・・だから、そこで踊りながら、男と女が出会ったり・・・結ばれたり・・・そういう背景がいい・・・といったことを話されているのがよくわかる映画です。

 祭りの晩は、皆が踊るけれど、ひょっとことかおかめの面をつける。

面をつける・・・顔が見えない・・・ということを利用して、弥太郎を森に誘いだすあたりの流れって・・・楽しい雰囲気がだんだんだんだん不気味なものになっていき、そして、立会い・・・というのがとても綺麗だし、迫力でもあります。

罠に一枚噛めよ・・・と最初は言われた千秋実が・・・「裏切ったな!」と言われと「表がえったんだいっ」と即答するあたりの呼吸もいいですね。

会話のテンポがやはりとてもいいし、テンポいいだけでなく、緩急のつけかたなどもすごいなぁ、と思います。 

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