トイレ、どこですか?

トイレ、どこですか?

Public Toilet

2008年1月31日 DVDにて(日本未公開)

(2002年:香港=韓国:102分:監督 フルーツ・チャン)

 高尚な真面目さを持つ映画でも必ずといっていいほど汚物ネタを入れるフルーツ・チャン監督。

香港返還三部作、『メイド・イン・ホンコン』『花火降る夏』『リトル・チュン』は、それまでの香港映画になかったような、真面目さというのが際立っていたのですが、汚物ネタ、、、、というのがあるのです。

インタビューで、「汚いシーンをカットする気はないのか?」なんて聞いていた人がいたけれど、監督は

「そんな気は全くありません」

 今回は、北京、香港、釜山、インド、ニューヨークを結ぶトイレ物語。

しかし、「トイレで拾われて便所神とあだ名されている主人公、トントン18歳(阿倍力)」は、自分を拾って独身のまま育ててくれたおばあさんが入院して昏睡状態のおばあさんのために「薬を探す旅にでる」

トイレ、というものが中心にあるけれども、実は、この映画は「家族や恋人の病気を治すために奔走する若者たち」の映画でもあります。

 トントンは釜山からニューヨークに行く。

親友、トニーは、病気の弟のためにインドに行く。

そこで出会う、人々。

 前半はコミカルに進みますが、ニューヨークに行ったトントンは、香港からの殺し屋サム(サム・リー)と出会う。

そこで巻き込まれてしまうトイレでの殺し。

トニーはインドに行っても・・・・・ガンジス河で何も見つからない・・・出会った言葉は「自分で歩いていけ」

釜山の海辺の男の子(チャン・ヒョク)は、海で拾った、自分は海の生物だ、という女の子が病気だと思いこんで、なんとか治そうとする。そして服だけのこして、海に帰ってしまった女の子。

 後半になってくると、インドやニューヨーク、そして中国万里の長城でのイメージ映像が見事につづられる。

こんな驚きのアングルでニューヨークを撮った人がいるだろうか。

 トントンのおばあさんは、2人の男の人から求婚されても拒み、結局3人は独身のまま年をとった。

町の長老となった2人だけれども、一人は公衆便所で急死する。

 トントンのモノローグ。

「トイレで産まれた僕が便所神ならば、トイレで死んだ長老は、便所仙人か・・・・・・」

 公衆トイレの前にたたずむトントンにはスポットライトがあたり、周りには雪がはらはらと「足元から降りあがる」

トイレの話と並行してこれだけ、「誰かのために奔走しつづける・・・」姿を追った映画はないかもしれませんね。

自分を捨てて、誰かを治そう、救おう・・・とする男の子たち。

 トイレ、というのは下品とか、汚いとか言われますけれど、でも、人間にとって食べることと同じように排泄というのは必要なことです。

それを映画にしてしまったのですから、おすすめはしない・・・・特に物を食べたり飲んだりして観てはいけません。

 誰かのために奔走して、見つかったものは・・・・なんなのだろう。

生きるということは、どういうことなのだろう。

なんかなぁ、観終わった後の後味は

「・・・・しあわせになりたい・・・」でした。

不思議と生きるということを、くっきりと浮かび上がらせる映画でありました。

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