ロリータ

ロリータ

Lolita

2008年2月4日 DVDにて

(1962年:イギリス:153分:監督 スタンリー・キューブリック)

 この映画の脚本は原作のウラジミール・ナボコフ自身が書いています。

だから、原作の世界をとても大事にしているとは思いますが、映画としてはすんなり観られるものになっています。

153分もあるんだ、この映画・・・と最初は驚いたのですが、さすがキューブリック監督。

その映像・・・モノクロなのですが、モノクロならではの美しさ、そして完璧ともいえるカメラワーク。素晴らしいですね。

 ロリコンの語源になった「ロリータ」ですが、どうもこの映画についてはロリータを演じたスー・リオンという女の子が、「自分の好みにあっているか、いないか・・・」だけで語られているのが面白かったです。

なんか観てる方すっかりハンバート教授状態ですよね。

 この映画は1962年ですし、あえて、露骨な性描写はさけているので、「いやらしくない」のですが、でも、ロリータをめぐる男たちの「いやらしさ」合戦は見事ですね。

 男たち・・・というのは、ジェイムス・メイスン演じるハンバート教授。

自分のものにしたいがために、好きでもないロリータの母(シェリー・ウィンターズ)と結婚、しかし、ちょろちょろしはじめる、劇作家のクレア・クィルティ(ピーター・セラーズ)

なんか・・・ハンバート教授ってお堅いようで、でも、なんか餅をねちねちついているような性格なんだろうなぁ・・・とにかく「少女ロリータ」を独占することに心砕いている。その嫉妬の出し方が、ねちねちねちねち・・・・うあぁ・・・。

 教授からしたら、自分の好みの容姿の若い少女を、自分にあうように教養あふれる完璧な少女にする・・・って願望なんでしょうが、普通のティーンエイジャーであることには変わらないロリータにとっては、鬱陶しい。

父親気取って、お説教なんかしても、「ガラス瓶の中の船」みたいにいつまでも永遠にわたしの美少女でいてほしいという願いは無理なんですよ。ロリータに望んでいるるのは、まぁ、レディに成長してほしいでなく、「自分のお人形でいてほしい」

後に、ロリータに、すぱっと'Past is past.'(過去は過去よ)言われてしまうけれど、それで、納得いかない、やきもち嫉妬のねちねち加減・・・自分が見えないで、それをすべてクィルティのせいだ・・・と他人のせいにする身勝手さ。

 反して、飄々としたクィルティはピーター・セラーズお得意のいろいろな人物に扮する・・・ということも上手く使って、巧妙でずるがしこい。

ダンス・パーティで、体をほとんど動かさずに踊るダンスって見事に決まっていますね。

 ロリータを演じたスー・リオンは、小悪魔というより、健全な美少女です。

健全なお嬢様というより、ハンバートが日記に書くように、どこかだらしなくてマナーがなっていなくて「卑俗さに惹かれる」まぁ、ごく普通のかわいい女の子って感じです。

でも、ハンバート教授にあるものは「恋」なのか「独占」なのか・・・・よくわからず嫉妬の雨を降らせる・・・という怖いですね。

 ある意味、ハンバート教授の愚かさ全開とも言えるし、好きでもなく日記ではこっそり「悪口ばかり書いている」母親と、娘と一緒にいたいがために結婚するあたりの、残酷さ。

ハンバート教授をさっさと捨てるロリータ以前に、教授が残酷。

 ロリータを貶める男、クィルティをあまり出さずに、ちらりちらり、じわじわとだしてくるあたりの呼吸が怖いよね。

だからこそ、ハンバート教授は「なぜ!!!!!」と理解できないのです。

恋は独占ではない・・・・それがわからないインテリの愚かさが怖い・・・そんなことを思いました。 

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