八州遊侠伝 男の盃

八州遊侠伝 男の盃

2008年2月9日 東京国立近代美術館フィルムセンターにて(生誕百年 映画監督 マキノ雅広(1)

(1962年:日本:84分:監督 マキノ雅弘)

 マキノ監督の自伝を読んでいたら、この映画は、カラーにするか、モノクロにするか・・・でいろいろあったそうで結果、モノクロで撮られています。

1962年当時は、まだ、カラー映画は製作費が高い・・・なんとか片岡千恵蔵で安く映画を作れないか・・・というオファーがあったそうで、なら、モノクロでやります・・・というところが、マキノ監督の器用なところ、を見たような気がします。

もちろん、あちこちの映画会社を渡り歩いて、安く、早く、儲かる映画ならマキノ雅弘だ・・・といったとらえ方をされてしまっていることに、監督自身は、もう、何でも屋だから・・・とよく言われていますね。

本当に映画の世界というのは、難しいものだ、と思います。観ているわたしは、何気なく楽しんでいるわけですが。

まぁ、あまり、苦労の裏話を見せちゃいけないということも、マキノ監督はよく、わかっていたようにも思います。

 さて、この映画は、国定忠治がお縄になって処刑されて一年。

国定忠治の跡目をねらって、新しいやくざが台頭しはじめるころ・・・・一人の旅人が上州磯部温泉に現れる。

 ちょうど祭りの季節。

源次と名乗る旅人(片岡千恵蔵)は、最初は目立たないけれど、だんだん、やくざがぶいぶいいって、とうとう・・・という顛末。

 祭りのシーンも盛りだくさん。

源次が泊まることになる宿の娘が、映画初出演の藤純子。その恋人に時代劇は初めてだったという千葉真一。

ただ、忠治のあれこれだけでなく、千葉真一の父である志村喬が重要な役どころだったり・・・若い2人はとにかく初々しい。

千葉真一は、祭りの太鼓の名手。まぁ、なんとなく祭りの似合う若い衆(青年じゃなくて、やはり若い衆でしょう)で、運動神経良さそう、藤純子は、えくぼのかわいい娘さん。

 この宿屋・・・というのが温泉宿で、ものすごく奥行きのあるセットを組んでいました。

背景の遠くに渡り廊下があってそこを歩いている人などいるのです。

そして岩風呂・・・広いお風呂でなく、ごろごろした石で細かく区切られたような石風呂ですね。

宿屋といい、風呂といい、なかなか風情がありますって、わたしはどこ見てるんだか。

 しかし、やくざが祭りを台無しにするのを黙って見ているわけにもいかない源次。

用心棒の浪人との対決・・・なんて、竹林でさっと切った竹をさっと相手の喉元へ・・・なんてところは実に上手いですね。

あまり大立ち回りをせず、動きなしで、ぴしっ(そのあと、命か?金か?なんてやりとりをする・・・浪人は、うーん、金・・・とか言うんですね)

 国定忠治は生きている・・・そんな噂が流れるなか、源次は何者なのか?という部分もあり、なかなか見ごたえありましたね。

早く、安く・・・なのかもしれないけれど、それでもこんな映画もちゃんと作れるんですよ。すごいなぁ。 

0コメント

  • 1000 / 1000

更夜飯店

過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。