いたいふたり
2008年2月10日 DVDにて
(2002年:日本:112分:監督 斎藤久志)
なつ(唯野未歩子)と涼(西島秀俊)の若い夫婦・・・・突然、なぜか、どちらかが「痛い」思いをすると、同じところに同じ痛みが相手にも生じる・・・・という不思議を描いた映画ですが、この「痛みの共有」ってどういうことなの?と思うと、観終わった後、複雑ですね。
夫婦といっても、若くて、お互い仕事をしていて、どこか同棲生活の延長のような雰囲気があり、どこかしら「幼い」雰囲気を持つ2人。
それは、家に帰ると「かくれんぼする」ということが儀式のようになっている・・・ということで、感じますね。
最初、なつは、家に帰ると冷蔵庫の中のものをすべて放り出し、中に隠れてしまう。
そこへ帰ってきた涼ですが、一応、自称カメラマンなのですが、どうにも女たらしで、女をつれこんできてしまう。
そこで、冷蔵庫から飛び出したなつと大ゲンカ。
なつがいきなり包丁を持って、手首を・・・・というと、涼の手首にも・・・あ、痛!と全く同じ傷ができてしまう。
それ以来、頭をぶつければ、転べば、浮気の相手にビンタくらえば・・・離れていても「いたいふたり」
この涼という男は、まぁ、ハンサムで東大出てて、バイトで予備校の先生なんかしているのですが、可愛い気に入った生徒の女の子にはすぐ、「僕のこと、好きでしょ。僕も好きだよ。モデルにならない?」とかなんとか、やたらナンパを平然とする男です。
一応、結婚指輪をしているけれど、家を出ればはずしてしまい「モテモテのハンサムな東大出てるカメラマン」を謳歌しちゃってる・・・って感じでしたね。
結婚していても、どうにも生活力が感じられないのが、涼という男。
涼は「好き」と言って間髪入れずに強引にキスをする、という手口で、あらまぁ、涼を演じた西島秀俊・・・何回、何人とキスしたか、また、浮気ねっ、キィとビンタはられたか・・・覚えていないくらい、たくさんやってくれますねぇ。
まぁ、ビンタくらいなら、離れていてるなつは「あ、痛!」くらいなのですが、合コンでナンパした女が、いきなりムチだして・・・・・SMの女王様だったのかっ!なんてところは、ぼこぼこに蹴られ、どつきまわされる涼は、笑えるのだけれど、その時、スーパーで買い物をしていたなつは突然の・・・・に、立てなくなってしまう・・・なんて笑えない。
涼に会って・・・「どうしたの、あれは何だったの?」と心配すると、
「やくざにからまれちゃってさぁ、もう少しでコンクリ詰めだよ」などという涼。
もてる浮気男は嘘つきです。嘘つき涼。
涼はもてるし、なつはなつで、職場の人から告白されたりして、もてるふたり、でもあります。
また、なつの弟、というのが、姉が好きで、いつもどこかで「ふたりを監視している」というのも怖い。
ノートパソコンを自転車に積んで、メガネにパソコンの液晶画面が映る・・・というときの弟の無表情が怖い。
涼をつけまわす女子高生、なつに告白する同僚、なつの弟・・・・押しかけてきて、「わたしが好きなの」「僕が好なんだ」「私の方が もっと好きなの」・・・・・という「好き好き好き」大合戦・・・なんて、「好き」って言葉が怖くなりましたよね。
そんなに簡単に連発されると、観ている方は戸惑うと同時にうんざりもします。
なんだよ、好き好き好き!!!!って・・・・とっても浮ついたむなしい言葉。「好き」
しかし、なつの妊娠の発覚。
・・・・・・・・え?でも痛みを共有するふたり・・・・・出産の痛みも?
ここで「いたいふたり」は、大ゲンカをします。たたき合っても、同時に自分にも痛みが走るのに、あざも同じところにできてしまうのに・・・これがふたりの「好き」の証拠?
逃げ出す涼。追いかけるなつ。2人はそして海に行き、一緒に写真をとりますが、その顔にあるのは不安と一種の不幸。
なつを演じた唯野未歩子が、ボーイッシュで少年のようでもしっかりとしていると同時に幼さも、西島秀俊は、予備校の生徒に手を出した、とクビを言い渡される時に、反省した顔、というより、どこかニヤって感じで平然としている「つけあがってるハンサムだけどヤな男」がうまいですね。
しかし、不思議とこの2人、お似合いのカップルなんです。やはり、なつの相手は、誠実だけど平凡なサラリーマンの同僚でなくで、なんとなくあやうい危険で無邪気な空気を持つ涼でしょうね。そういう雰囲気を上手くだせる演技達者なふたり。
いや、それにしてもこんな恋はしたくないなぁ。と思ってしまう・・・・好きって何?映画でした。
(ちなみに、何回も出てくるビンタは、岡本喜八監督の映画によく出てくる、往復ビンタ!の方が迫力で痛そう)
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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