りゃんこの彌太郎
2008年2月24日 東京国立近代美術館フィルムセンターにて(生誕百年 映画監督 マキノ雅広(2)
(1955年:日本:94分:監督 マキノ雅弘)
今回のフィルムセンターのマキノ雅弘監督特集で、色々と俳優さんを知ったのですが、その中でもお気に入りは・・・若くて痩せている1950年代前半の小泉博さんです。
昔のスターというより、今風のちょっと子犬のような顔つきで、もとアナウンサーだったというだけあって弁舌さわやか、普通、ちょっと言えないでしょ、という台詞をすらっ・・・と言い切れるのは小泉博さんだと思いますね。
『次郎長三国志』での追分三五郎・・・にこの映画は近いのですが、タイトルはりゃんこ、つまり元侍だったということなのですが、ほとんどそのことは出てこないし、名前は潮来の彌太郎と言っていますね。
機織りが盛んな桐生にやってきた旅がらすの彌太郎。
最初はいいがかりのような感じで同じ、やくざの桂馬の政(河津清三郎)にからまれる。
ここで、笑ってしまうのは、チャンバラをなんで、ここで・・・?という土手の斜面でえいえいってやっちゃうんですよ。
なんだかあぶなっかしいなぁ。胸のすくようなチャンバラではなくて、なんだかなぁ・・・とほほって感じ。
こういうのマキノ監督って上手いんですよね。
この2人は結局、親しくなって行動を共に。
ところが、桐生では機織り娘を口入屋(今の派遣会社のようなものですね)が仕事の世話をしているのだが、足柄の方が賃金もいいし・・・・でも、義理もあるし・・・で、移れない機織り娘たちが困っている。
しかも口入屋、とはいえ、影では機織りに使えない娘は女郎に売り飛ばす・・・といったあくどいことを知った彌太郎たちは、娘たちを救うのです。
しかし、その娘たちの姉さん分にあたる、おはるに一目惚れしてしまった彌太郎。
口入屋たちはあの手この手で娘たちを逃さないようにする、惚れたんじゃない、惚れすぎたんだっ!なんて、こんな台詞をすらっと言って、彌太郎と政は、旅芸人の一座と組んで・・・祭りにまぎれて・・・で、彌太郎の恋は?
旅芸人の中には、毒消し売りのおいちを藤間紫さんが元気よくやっていたり、あんまの2人組、松と竹を千秋実と森健二がやっていて、このキャラクターの面白さ、ユニークさも見どころ。
また、なんだかんだいって、彌太郎に「惚れた」政の人のいい、きっぷの良さ。
もう、観ていて、気持いいです。
娘たちを・・・という作戦もあれば、歌あり、恋あり、踊りあり・・・チャンバラもあり。
よく出てくるのが旅からすのやくざが、笠を投げて表とでたら?裏と出たら?というものですが、この映画でもそれがとても気の利いた使い方をしています。
恋の余韻と、彌太郎と政の見事なバディ・フィルムになっていて、モノクロで見る着物もとても粋で、おしゃれで、いなせ。
でもねぇ、「俺に惚れちゃ、いけないぜ」って台詞は、もう、若き日の小泉博さんくらいしか言えない台詞なんじゃないでしょうか。それくらい、ちょっと生意気で、いい男で、強くて、元気のいい、女にもてそうな雰囲気を醸し出せる人はいないのです。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
0コメント