恋山彦(『風雲の巻』『怒涛の巻』総集編)

恋山彦(『風雲の巻』『怒涛の巻』総集編)

2008年3月16日 東京国立近代美術館フィルムセンターにて(生誕百年 映画監督 マキノ雅広(2)

(1937年:日本:103分:監督 マキノ正博)

 この日(3月16日)にフィルムセンターで観た3本は、すべて1930年代の映画で、当時のフィルムのままで、いや~~画面に雨は降っているし、台詞は聞き取りにくいし、音は割れているし・・・で、観るのに少し苦労したのですが、その中でも一番苦しかったのがこの映画。

公開時は『風雲の巻』(79分)『怒涛の巻』(90分)をつないで一本にしたという苦しさがあります。169分を103分だから1時間近くカットされています。

原作は吉川英治。

また、台詞がすべて歌舞伎調でほとんど聞き取り不可。何を言っているのかほとんどわかりません。

こりゃ、参ったなぁ・・・と思ったのですが、スケールの大きさというのには感心しました。

 坂東妻三郎が平家の末裔、小源太と浪人、無二齋の二役をやっています。(これは後に大川橋蔵主演でリメイクされていました)

「山彦」という素晴らしい三弦(三味線)をめぐって、将軍と戦う小源太です。

将軍から山彦を渡せ、大枚を出すから売れと言われても断った親を殺され、山彦を守って逃げてきた、お品をかくまった村は、実は平家の落武者の村落。

 将軍家はムキになってせめてくるのを攻防する戦いのシーンがすごいですね。

昔の戦いというのは、こうだったのだろう・・・という人と人が走って、ぶつかりあうのがものすごく迫力なのであります。

また、最後に天守閣の上で、小源太が戦うシーンはダイナミックですね。

マキノ監督はあまり合戦、戦闘シーンというのを撮らないのかな、と思っていたけれど、この戦闘シーンの迫力は今、どんなに特撮が凝っていてもかなわない、人間同士のぶつかりあい・・・が、状態の悪い映像でも見事に出ていることに感心。

戦いっていうのは、こう撮るんですよ、というお手本のような。

 真面目一方かというと、小源太が、時にスーパーマン状態になって、磔になった同志を磔台ごと肩にかついですたすたすた~~~って軽々と走ってしまうところとか、おおって、客席からどよめきがおこりましたね。

捕えられて地下牢に、入れられたお品を救うときも、道具もなにも使わず、素手でかちゃっと牢を開けてしまうのだ、すごいぞ。

 若い坂東妻三郎は、とても高貴な顔つきをしているので、平家の末裔・・・という雰囲気と、荒くれ素浪人、無二齋の潔い武士ぶりと、坂東妻三郎、スーパーマン映画でもあるのでした。

見づらかったけれども、観終わった後、おお~~っと見ごたえも感じる映画です。 

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