江戸の惡太郎

江戸の惡太郎

2008年3月16日 東京国立近代美術館フィルムセンターにて(生誕百年 映画監督 マキノ雅広(2)

(1939年:日本:84分:監督 マキノ正博)

 映画のフィルムの状態は悪いですが、映画始ってすぐに婚礼のシーンから始まります。

でも、花嫁、浪乃(轟夕起子)は、親が勝手に決めた結婚を嫌がって、花嫁姿で逃げ出します。

この時、雪に埋もれた家、つららが重くたれた家・・・で、雪の中を提灯で逃げた花嫁を探しまわるシーンが、とても綺麗。

マキノ正博監督は提灯の映像がいつもきれいだと思うのです。

 さて、場所は江戸のある長屋。

マキノ監督お得意の長屋ものです。長屋ものってどれも面白いんですね。

それは、長屋の人情などを、実際、家を追い出されて、長いこと長屋ぐらしをしていた、という思い出をとても大切にしている、という自伝での話からも納得です。

 長屋には寺子屋があって、その塾長をしているのが、浪人の島崎三四郎(嵐寛壽郎)

志村喬さんが、講談師でいたりします。

 そこに男の子、三吉としてもぐりこんだ浪乃。真面目で正義感の強い三四郎の元で暮らすようになります。

寺子屋での先生ぶり、というのがいいですね。手習をして、浪乃が書くお習字は「お父様のバカ」というのに笑ってしまいました。

それもとても綺麗な字で、育ちのいいお嬢さんだ、というのがちらりと見えるところが。

でも、親にむかってバカとは何だ!と叱ります。

 轟夕起子の男の子ぶり、というのが、よくよく見なくても女の子なんだけれども、男の子たちに混じってわあああ~~って元気に遊ぶ姿が無邪気でいいですね。

しかし、親たちは、江戸に浪乃を探しにくる。

また、長屋は、怪しげな占い師にのっとられそうになる・・・・自分が金持の娘だ、と言えればお金なんてすぐ出るのだけれども・・・

 この映画ものちにリメイクされていますが、轟夕起子さんは歌が上手いので、ちゃんと歌を歌う場面があります。

同時に実は男の子ではない、ということがばれてしまうのですが。

 そして最後に、強い味方の曾祖父の理解を得て、見事なお嬢様、着物姿で現れるという、ローマの休日のような、そんな古典的な面白さがあります。

 貧しくても志高い、真面目な浪人と、男の子になって自由になった浪乃のやりとりなども、ユーモラスでかわいらしい。

この映画の一年後、マキノ監督は轟夕起子さんと結婚するのでした。 

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