黒い土の少女

黒い土の少女

With a Girl of of Black Soil

2008年3月20日 渋谷 シアター・イメージフォーラムにて(韓国アートフィルム・ショーケース)

(2007年:韓国:89分:監督 チョン・スイル)

 今年で二回目になる、韓国アートフィルム・ショーケース。

去年は見逃してしまいました。コピーに反韓流、となっているので、韓国ものならなんでもいい・・・というだけの人は裏切られます。

素敵な恋もスターも、面白可笑しいストーリーもない。

 しかし、この映画が残す、苦い思いは、後々になっても残ります。

舞台は、ある閉山を迫られそうになっている炭鉱の町。

黒い土に白い雪がまだらに積もる・・・そんな「何もない街」

 主人公のヨンリム(ス・ヨンミ)9歳は、母はいない。

炭鉱で働く父と、12歳だけれど3歳くらいの知能しかない・・・という兄の三人暮らし。

しかし、父は仕事で肺を病み、仕事を辞め、新しい仕事も騙されてしまい・・・酒におぼれる日々。

兄は無邪気だけれども、手に余る。

父は、2人の子供をいつもかわいがる・・・けれど、生活はどんどん苦しくなる。

 ヨンリムを演じた女の子、台詞は少ないけれど、表情が上手い。ただただ、耐えているだけか、というとごく普通に兄の世話を進んでやる。父の心配もする。

でも、不安は隠せない・・・頼りになるのは近所のおじさんだけです。

だんだん、不安と失望の色を見せる顔がね。

 子供らしく、テレビではおもちゃのマイクを持って、人気歌手の歌を一緒に歌ったりするけれど、ひしひしと「黒い現実」が押し寄せてくる。

少女は、父が酒ばかり、無邪気な兄・・・・私ひとりがどうにかしよう・・・とする・・・その姿をこれみよがしに「可哀想」には描かないのですね。ヨンリムは、泣いたりわめいたりしない。でも、もう、誰も頼りにならないんだ、と知った後の行動。

特に、父がツケで酒買ってこい!と酒を買いに行くけれど、「ツケにして」と言えなくて、じぃ~~~~~~~~っと店員さんの顔を見てそのまま、だだだだだだっと駆け出してしまうあたり、したたかな、気の強い子なのです。

 寒いのにいつも上着を着ないで、セーター一枚で、はく息が白くて・・・そんな寒さの出し方も、映像の沈んだ色合いにしても・・・映像で空気を出すという方法が大変すぐれています。

話がこうでした、というよりも、そんな空気がよく出ている映画は観ていて、その世界に入り込みやすい。

 少女が、もし、自立できる大人だったら・・・・どうするのか、と思うけれど、やはりまだまだ、ひとりでは生きていけない、でも、この映画の女の子はそれを知った上で、ひとりでなんとかしようとするのです。

それを見事に出したラストシーンの少女の一見、無表情に見える顔に出ている、不安と同時に決心のようなもの・・・その強さにうたれてしまうのです。

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