色ごと師春団治

色ごと師春団治

2008年3月22日 東京国立近代美術館フィルムセンターにて(生誕百年 映画監督 マキノ雅広(2)

(1965年:日本:89分:監督 マキノ雅弘)

 この映画の主人公、大正から昭和にかけての人気上方落語家、桂春団治という人は、その落語の芸もあったけれど、私生活の破天荒ぶり、女房泣かせの浮気もののものすごい遊び人・・・で有名で、歌にも芝居にもなっているそうです。

藤山寛美が、軽妙な演技で、どうしても憎めない・・・そんな困った人をイキイキと演じていました。

 まぁ、借金するわ、借金踏み倒すわ、高座に穴あけるわ、浮気するわ、金は豪勢に使うけれど家に一銭も入れないわ、家に寄りつかないわ・・・・だけれども、なんだかんだいって春団治という人はもてるし、人からあきれられながらも好かれるし、芸は達者・・・それは何故かというと、本当に可愛げがある人物だからです。

口が達者で、褒め上手で甘え上手・・・母性本能をくすぐる「かわゆさ」全開の藤山寛美。

 女房は3人・・・変わるけれど、南田洋子、藤純子、丘さとみ・・・ですが、どうしようもない男でも、なんだかんだいって、春団治のことを悪く思わない。あきれはててしまっても、いつまでも春団治の心配をします。

さすがに子供ができたのに、振り向こうともせず遊びまくる春団治に、藤純子は、家を出て、娘が大きくなったから、といっても春団治を拒否します。

しかし、最初の妻、おたま(南田洋子)は、尽くしてもしょうがない、というより、外で勝手に子供作ってきちゃった・・・に身を引くのです。

 長屋暮らしをしているのですが、向いの家が、人力車の力夫の長門裕之。

ひそかに、おたまに恋心を抱いている、真面目な働きもの。

でも、春団治のことをなにかと助ける。

女だけでなく、男にも好かれるという人物です。

 何をしても皆、結局、許してしまうんですね。

それを「許さん!」という描き方をしていなくて、「あきれちゃうよな、ようやるわ(何故か関西弁)」という描き方なんです。

 マキノ監督自身、3回結婚しているのですが、映画のことで忙しくしていて家にはほとんど寄りつかなかったそうです。

良き家庭人、とは言えなかったマキノ監督の分身としての春団治・・・春団治は、落語のことになるとそれはそれは、高慢ともとれる、誇りを持っています。

そんなところもマキノ監督自身の思い入れが見えるようでした。

 でも、テンポのいい会話、男と女のやりとり、男同士の友情・・・なんだかんだいって、最後は人の情にすがらなければならないのよ・・・人情の良さというものがとても際立っています。

 そして最後の最後まで芸人だった春団治。

ラストは亡くなるわけですが、その死の描き方も、あら、わい、いつの間にか幽霊や・・・といった具合で最後まで、重苦しくはしない、そんな映画的快楽を追及しぬいているのに、笑いながらも、しみじみしたりしました。 

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