ダージリン急行(ホテル・シュヴァリエ付)

ダージリン急行(ホテル・シュヴァリエ付)

The Darjeeling Limited(with Hotel Chevaier)

2008年3月22日 日比谷シャンテシネにて

(2007年:アメリカ:全編で104分:監督 ウェス・アンダーソン)

 『ロイヤル・テネンバウムス』 『ライフ・アクアティック』に続く「ユルユル映画」第三弾~~~とでもいいましょうか。

今、ゆるゆる映画を撮らせたらこの人が一番ではないか、と思うウェス・アンダーソン監督。

3本観てきて、共通する点は・・・

・家族((または疑似家族)

・仲の悪い兄弟姉妹・家族たち

・なぜか、みんな金持ち・・・なのになんだか不満気

・部屋・・・という仕切られた空間

・おそろいの服や小物

・・・なのですが、今回はインドを舞台にアメリカ人の仲の悪い三兄弟が、ダージリン急行に乗って、わらわら、ゆるゆるする顛末。

 その前にプロローグにあたる13分の短編’Part1’として『ホテル・シュヴァリエ』

フランスのホテルに長期滞在している謎の男(ジェイソン・シュワルツマン・・・のちにこれが兄弟の三男とわかる)がいる。

そこへ突然やってくる女性、ナタリー・ポートマン。

ここではゆるゆるでない、男女2人のけだるいような、でも何か腹の底を探り合っているような会話が描かれます。

 そして’Part2’として『ダージリン急行』

列車に遅れそうになるビジネスマン(ビル・マーレイ)が走っているのを、追いこして列車に飛び乗るのが二男のエイドリアン・ブロディ。この瞬間がとてもいいですよね。何かを予感させるような・・・そんな乗り方。

 列車の中には長男、オーウェン・ウィルソン、フランスからやってきたジェイソン・シュワルツマンが、待っている。

長男の発案で、父の死後、いなくなってしまった母を探しに来た3人。

3人はおしゃれなかわいい動物の絵のついたトランクやバッグ、スーツケースを持ってきている(すべてに1~13まで番号がくっきり書かれているのが妙におかしい・・・長男はバイクで怪我したと頭が包帯だらけ・・・)

 いきなり弟たちのパスポートを取り上げる長男。そして、べらべらと仕切りルールを勝手に決める。

弟2人・・・といっても皆大人なんだけど、子供の時からそうなんでしょ、というのがわかる、うんざり顔で反対せず沈黙。

 でもですねぇ、この3人って、見事に似ていないんです。目や髪の色は違うし、顔つきも違う~。

『ロイヤル・テネンバウムス』でも、グイネス・パルトロウとベン・スティーラーとオーウェン・ウィルソンが兄弟姉妹ですぅ~~~なんてことを平気でやっていたから、もうこれは確信犯的キャスティングだと思います。

 なんだかんだいって、口喧嘩を繰り返すのだけど、それがどうでもいいようなことでぐだぐだ言うんですね。

二男がしているベルト(ちゃんとトランクと同じデザイン)を、長男がめざとく見つけて「それはパパのだろう。勝手に持ち出したな!遺産は平等に分配しているはずだろう!」とやたらベルト、ベルトというのが繰り返されたり。

 さて、この映画での部屋とは列車のコンパートメント・・・個室です。

狭い個室に仲の悪い、しかも、お互い離れていたのに急に行動を共に・・・なんて上手くいくわけがない。

でも、長男はケチケチ言いがかりをつけるのを、はいはいはい・・・と従う二男、何も言わずにむくれている三男。

 ところが、ダージリン急行は、止まってしまう・・・一週間って約束だっただろう!と言っても「列車が迷子になったんだよね」

たくさんのスーツケースを抱えて歩くことになる3人。

 なんだかインドのスピリチュアルな経験をしてしまう3人でした。

どこへ行っても、口喧嘩が絶えないけれど、でも、なんとなく仲直りしてゆるゆると先にすすむ3人。母を求めて三千里。

長男は妙に、「ママは俺達を捨てたんだ。ネグレクト、だぞ、育児放棄だぞ」と力むのですが、結婚もしていい大人が、ママ、ママ・・・と反抗期の男の子みたいなんです。

 でも、大人だし、3人にはそれぞれ悩みがある。お互い、仲悪いということは悩み事なんてお互い、知らないのです。

しかし、ゆるゆると3人の隙間は埋まっていく。

その過程がとても「しあわせ」なんですね。

3人には劇的な何か・・・があったわけではないけれど、最後、列車のコンパートメントが次々映されて・・・いろいろな人がいて・・・そんな映像に、とてつもない至福感があふれています。

 仲が悪いからピリピリして神経質なやりとりであってもなんだか、ゆるゆる。

予想外の出来事に呆然として突っ立ている3人の絵ってとてもゆるゆる。

 3人個性があってよかったのですが、二男のエイドリアン・ブロディは、ものすごく足が長いんですね。そして指も長い。

わたしが好きなのは、何故か、エイドリアン・ブロディは市場で毒蛇を買う(箱にはドクロマーク)・・・そしてお約束というか、やはりね・・・列車の中で蛇が逃げ出してしまうのです。

喧嘩してたくせに・・・・ヘビがに・にげたぁ~~~とさっと一致団結する3人のタイミングのうまさ、なんてさりげないけれど、上手い。

そういうシーンがたくさんあって、この映画は、ゆるゆるとしながら観るのがいいでしょう。

せちがらい世の中に、こんな映画は必要なんです。

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