アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生
Annie Leibovitz Life Through a Lens
2008年3月22日 シネカノン有楽町二丁目にて
(2007年:アメリカ:83分:監督 バーバラ・リーボヴィッツ)
アニー・リーボヴィッツ・・・という名前を知らなくても、わたしは何枚かの写真は知っていました。
商業写真や、有名人のポートレイト、報道写真・・・幅広く活躍しているアメリカでは有名な女性カメラマンです。
妹であるバーバラが監督をしているので、姉妹という近さがあるのでしょうか、またはアニー・リーボヴィッツという人のお人柄なのでしょうか・・・かなりフランクな雰囲気の映像です。
最初は絵画を勉強したあと、1960年代、雑誌ローリング・ストーン誌の表紙写真を始め、ローリング・ストーンズに密着同行など音楽関係のつながりから始まったカメラマン人生。
しかし、すごいのは、アニー・リーボヴィッツという人はとてもタフで、写真の構図や色合いなど様々に変化させている、というところ。
これが私のスタイルだっという力みはないけれど、とにかく働いて働いて・・・特にドラッグが全盛のころのストーンズのライブ同行なんて、ドラッグ中毒になりに行くようなものである・・・と言われても飛び込んでいく。
実際、中毒になって更生施設に入った経験も・・・
そして、様々な人のインタビューがはさまれますが、皆が口をそろえて言うのは、「いつも一緒にいて、いつの間にか写真を撮られていることを忘れてしまう」
被写体となる人にプレッシャーをかけない、懐に飛び込めるお人柄・・・というのもよくわかる、ざっくばらんであけっぴろげな様子。
しかし、注文によっては、凝った衣装に凝ったセットを作り、フィルターに凝り、照明に凝り・・・まるで中世絵画のような写真とは思えない絵のような写真も撮る。
キルティン・ダンストがモデルとなったマリー・アントワネットの映画の撮影など、「こんなに準備して、撮影は10分なの」
写真と同時に映されるのは、恋人と呼ばれた女性、スーザン・ソンタグとの関係。
評論家のスーザンと写真家のアニー・・・・深い知性で結ばれたものの、16歳年上のスーザンはガンで亡くなる。
そのあと、すごいのは、子供3人作ってしまうアニー・リーボヴィッツ。
それでも、もう高名な写真家としてばりばりと仕事をする様子。
女としてできること・・・なんて言うとジェンダー論とかフェミニストなんとか・・・に抵触してしまいそうなのですが、アニー・リーボヴィッツという人はしっかりとした女の人、なのです。
だからこそ、被写体を観察し、相手を安心させ、まるで子供をあやすように、モデルたちを褒めて、テキパキと写真を撮る。
ミュージシャン、政治家、ハリウッド・スター・・・・アニー・リーボヴィッツという人にかかるととたんに「絵の中の生きた人」になるのがすごい。ただ、映しましたなんていう世界ではなく、その場に応じて、スタイルを自由自在に変えられる人なのです。
もちろんそのために、様々な苦労があったことがちらり、と出てくるのですが、あくまでも、カメラの前のアニー・リーボヴィッツという人はタフな人。
勝手な想像ですが、大いに食べ、大いに飲みそうな人です。
ジョン・レノンの暗殺の直前、生前最後の写真を撮ったということで有名なのですが、わたしが好きなのは、白鳥を首にまいたレオナルド・ディカプリオのモノクロの写真。
普通の人ではできない、普通の人では撮れない写真だと思います。とても「美しくてさびしげ」
そんな一面を白鳥を抱かせる・・・というシチュエーションを考えつくところが、写真家でもあり、画家としての才能もある人なのだ、と感心しました。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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