アズールとアスマール
Azur et Asmar
2008年4月5日 DVD
(2006年:フランス:99分:監督 ミッシェル・オスロ)
ジブリが海外の優れたアニメーションを紹介するシリーズの第三弾。
『キリクと魔女』『プリンス&プリンセス』が大好きなミッシェル・オスロ監督の新作で、相変わらず影絵の手法を用いていますが、今回は3D立体アニメも盛り込んでいます。
アニメは、絵が好きかどうか・・・が一番に来るのですが、オスロ監督のアニメに共通しているのは「異文化との融合」だと思います。
日本のアニメだったら、たとえばですね・・・『宇宙戦艦ヤマト』だったら地球を救うヤマトの乗組員は全員、日本人。
『サンダーバード』だったら、世界の危機を救うのは、イギリス人だけ・・・のような単一国家的なことには、興味は示さず、いつも「世界にはいろいろな人種がいて、それぞれの文化がある、それぞれのおとぎ話が妖精がいる」ということを、こども向けとはいえ、発信しています。
あるヨーロッパの国。
領主の息子である、金髪に青い目のアスール少年は、アラビア人の乳母ジェナヌに育てられます。ジェナヌの息子、黒い肌に黒い瞳のアスマールとは同じ年で、いつも一緒な2人。
ジェナヌも、2人わけへだてなく息子のように可愛がります。おとぎ話、歌・・・。
ところが、ある年になると、白人特権階級の息子は学校へ、移民であったジェナヌとアスマールは追い出されて、別れも言えず別れてしまう2人。
美しい青年に成長したアスールですが、乳母ジェナヌのおとぎ話、閉じ込められたジンの妖精を救いにいく冒険の物語が忘れられず家を飛び出してしまう。
船が難破して、アスールがたどり着いたところは、アラビア圏の国で、「青い目は不吉」と石を投げられる。
目を閉じて盲人のふりをして、怪しげなクラプーという男に出会う。クラプーも昔、ジンの妖精を求めて来たけれど、今は物乞いやぺてんをしながら街にとどまっている。クラプーは、行くところがないくせに、この地の文句ばかりいいつのる。
ふとしたことから、追放されたジェナヌが商人として成功し、再会するアスールとジェナヌ。
しかし、アスマールは、昔、追いだされたことを根にもって完全無視。
2人は念願のジンの妖精を探す旅に出ます。
確かに、メインとなるのは白人で青い目のアスールなのですが、舞台となるのはイスラム文化の国。
その風景がとてつもなく美しい。エキゾチックで、色鮮やかで、目をみはるような美しさです。異文化へのあこがれ、尊敬を監督が持っている、というのがよくわかるのですね。
さて、ジンの妖精を救う旅には、様々な試練が待ち受けている。どうしたらよいか・・・それは街一番の知恵者であるシャムスサバナ姫がよく知っている。
頭がよく、知識も豊富で、身分も高く、貿易の天才でもある・・・シャムスサバナ姫。
しかし、アスールが訪ねて行くと・・・・出てきたのはまだ幼女とも言える幼い姫。
ところがところがこのシャムスサバナ姫、すごいお姫様なんですね。
このシャムスサバナ姫がとても、イキイキとしていて可愛らしかったですね。生意気なんですが、実に理路整然としている。
旅の途中で必要なアイテムを、おしげもなくアスールに与えてくれる。
さて、アズールとアスマールは、試練を乗り越えてジンの妖精の元への旅に出ます。
驚いたのはラストですね。
『プリンス&プリンセス』では様々なお姫様の物語を描いていたのですが、これはまた・・・・同時に着いたアスールとアズマール・・・どちらを結婚相手にするか、決められずに迷ってしまう。
お姫様も王子様もひとりだけ・・・・という固定観念を覆す、どっちにしたらいいのかしら????
そして、意外なラスト。
しかし、ジンの妖精に呼ばれたジェナヌ、シャムスサバナ姫、クラプー・・・・誰も決められない。
でも、クラプーが「これこそ、未来への答え」というように、大団円になるのでした。またそのシーンが青を基調とした素晴らしく美しい場面です。
オスロ監督のお気に入りはシャムスサバナ姫だそうで・・・けろっと「王子2人を夫にすればいい」と言うようなあどけなさ(これは却下)と、最後に、パヴァーヌを踊りましょう・・・と全員が踊り、礼をするところで終わる、この物語・・・確かにシャムスサバナ姫なくては成り立たない物語でもあります。
誰かひとりがヒーロー、ヒロインではないおとぎ話。そんな現代の要素もしっかりと見据えたところ、オスロ監督のとても国際的な良識が伺えるアニメです。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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