トゥヤーの結婚

トゥヤーの結婚

Tuya's Marrige

2008年4月6日 渋谷 ル・シネマにて

(2006年:中国:96分:ワン・チュアンアン)

第57回ベルリン国際映画祭 金熊賞(グランプリ)受賞

「すべてが永遠に消え去ってしまう前に」

 ワン・チュアンアン監督はこの映画を撮るきっかけについてこう語られています。

モンゴルの大草原での緑豊かな放牧生活を描いた映画はありますが、現実としては、砂漠化がすすみ、放牧は国が規制を始め、どんどん街に出ていくしかない・・・のが近年のモンゴル事情なのだそうです。

 この映画の主人公、トゥヤー(ユー・ナン)は、夫、バータルが事故で歩けなくなってしまった分、ひとりで働いています。

羊の世話から、家事、こどもたちの世話・・・そして夫の世話・・・しかし、若くて働きもののトゥヤーも体に支障をきたしてしまう。

 では、どうするか・・・・で、一応、バータルと離婚をして、再婚をする・・・という方法をとります。

若くて働きものの女性なら、子連れであっても、再婚者はいる・・・しかし、強気のトゥヤーの出した一番の条件は「元・夫バータルも一緒に暮らす」

これには、さすがに、再婚相手もひるんでしまいます。

 実際、トゥヤーとバータルは、憎み合って離婚したわけではなく、生活のためにやむなく離婚して、とても仲の良い夫婦なんです。

バータルは、決して怒ったりせず、家の中ではまだ幼い娘の相手をし、家事を手伝うけれど限度がある。

 それでも、バータルは病院に入れて、子供たちは街の寄宿学校へ入れれば・・・という金持の元同級生が現れるけれど、トゥヤーとバータルは結局離れて暮らせないのです。

 いつもラクダに乗って外で働き、顔をスカーフで巻いて日に焼けた顔のトゥヤー。

なによりも若くて働きものだ・・・というのが魅力である、というのが現実的ですね。

 トゥヤーの隣(といっても離れている)家のセンゲーという男がいますが、もう、金ばかり使う妻が家出ばかりして、離婚だ、別居だと大騒ぎする。トゥヤーとバータルとは、正反対の夫婦です。

 しかし、なんだかんだいって、トゥヤーはセンゲーを助けるし、センゲーはトゥヤーを頼りにする。

センゲーには結構きついことをぽんぽん言うトゥヤーですが、センゲーもまた、事情を知って、行動に出る。

 トゥヤーというのは「光」という意味だそうですが、めげない、あきらめない、こびない・・・トゥヤーは妥協ということをしない。

強情ともわがままともとれますが、家族の幸せを考えた結果の「再婚という決断」

 最後の最後までトゥヤーとバータルは、仲睦まじい。もし、怪我がなければそれなりに円満な家庭なのに・・・という厳しい条件の 元で生き抜くひとりの女の人を通して、結婚とは・・・ということを考えてしまいました。

ただ、生活のために結婚するのもなんだけれども、生活できない結婚というのもまた無理がある。

難しい問題を、モンゴルの美しくもさびれていく風景に映し出した、力強い映画でした。 

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