秒速5センチメートル a chain of short sotries about their distance

秒速5センチメートル a chain of short sotries about their distance

2007年3月24日 渋谷シネマライズにて

(2007年:日本:60分:監督 新海誠)

3月は、なかなか良い映画が多いのですが、中には、「なんで前売買ってしまったの、わたしは。。。」と思う映画もあります。

 この映画もそんな一本でした。

安いと思って買った券、なーんだ、もともとが60分のアニメだから、券が安くなっていたわけではなかった。

 「桜花抄」「コスモナウト」「秒速5センチメートル」という短編連作アニメで合計で一時間です。

とはいえ、3話で60分だから1話は20分、という単純な構成にはなっていませんでした。

 最初始まった時に・・・う。しまった・・・・・と後悔がどっと押し寄せたのですね。

典型的なテレビタイプのアニメキャラクター(背景は凝っていても人物は平坦な絵)、センチメンタルな台詞、話・・・でも、第一話が終わって、主人公、遠野くんの声が水橋研二だ、と知ったとたん、ああ、水橋くーん!と急に思い入れが出てきました。

 好きなんですよ、水橋研二くん。

丸い顔して、リスとかプレーリードッグみたいな顔で、映画『ナイスの森』では、そんなぬいぐるみみたいな水橋君に、ズバリ、きぐるみのぬいぐるみを着せる、というアイディアにきゃあきゃあ、喜んでいたわたしです。

 『稲妻ルーシー』でもフランキーというタレント事務所のスカウトマンやってましたけど、「フランキー!」って呼ぶと、「はーい」って逆立ちしてるとか・・・

 さて、第一話、第二話とセンチメンタルなお話ですが、これじゃー『ノルウェイの森』ですがな・・・と思ったら第三話。

これがね、山崎まさよしの歌にあわせて、ぱっぱっとフラッシュバック手法で全てを語ってしまうのです。

あまり語りたくないことを上手く描くひとつの方法かと思います。

多感だった10代も大人になれば、憂鬱な都会に飲み込まれてしまう・・・そんな憂鬱感。

 第三話を見終ると、全体としての構成がいかに上手くできていたか、じーんとするという仕組みになっていました。

いいな、と思うのは中学生、高校生、社会人・・・となった男の子と女の子が「むかしはよかった」「むかしにもどりたい」というノスタルジイ感がない、ことですね。

 むかしはむかし、でも今は違うのだ。

桜の花びらの落ちる速度は秒速5センチメートル。

近づいたり、離れたり、住む場所も、気持もすこしずつ離れていく若者、距離と時間の中で変わっていく若者・・・というのは実に綺麗に出てました。

 話はハッピーエンドでも、悲劇でも、泣けるようなラストでもなんでもない。

山崎まさよしの歌が流れる中で、水橋研二のモノローグがひそひそとつぶやかれる。

 ただのやさしいだけの男の子に見えても、やさしいの裏にあるのは憂鬱という、結構、大人がしみじみするアニメでした。

しかし、それにしてもセンチメンタルな世界ではあります。

 観る前の後悔、見始めた時の後悔・・・が最後にどんでん返しになるアニメや映画は久しぶりで、なんか良かったなぁ~と思いました。

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2008年4月22日 DVDにて

 桜の季節になって・・・普段、花なんかなんとも思わない人が「花見!花見!」と騒ぐのを苦々しく思いながらも、ふと、満開の桜に目を奪われてしまう・・・

 桜の出てくる映画は日本映画では多いのですが、わたしが「桜」といわれて思い出すのはこのアニメーション映画でした。

 今回、DVDで再見して改めて感心してしまいました。

桜・・・というイメージではありますが、第一話『桜花抄』は冬の物語であり、第二話『コスモナウト』は夏の物語です。

しかし、主人公、貴樹(水橋研二)の中では、離れてしまっても、桜の下で笑っていた女の子、明里が忘れられない。

 このアニメというか新海誠監督の特徴は、季節感をものすごく大事にする、ということですね。

そして電車というものが、クローズアップされますが、緻密な電車の背景なんか、すごいですよ。

 このアニメは、最初は10の短編をそれぞれ10の曲にあわせた短編集にしようと思ったそうですが、劇場公開ということになって、第三話『秒速5センチメートル』で山崎まさよしの『One more time, one more chance』一曲分にした、そうです。

 第一話では、転校してしまった明里に会いに行こうと、貴樹は電車を乗り継いでいく。しかし、大雪で電車は、止まり、動かなくなり、貴樹は電車の中で暗然とする。しかし・・・・どんどん暗くなり雪はどんどん降ってくる。田舎の電車は田圃の中雪にうずもれて止まってしまう。

しかし、ずっと貴樹を待っていた明里。

 第二話では、貴樹は、種子島の高校に転校する。宇宙センターのある島で、貴樹は静かな男の子。そんな貴樹に密かに憧れている女の子。

夏の空に、ロケットが高く打ち上げられるのを見る2人。しかし、女の子は告白しようと思っても、言いだせない。それは貴樹が「誰か」をずっと好きなのだ・・・ということがわかるからです。

そして、東京の大学へ行ってしまう貴樹。残された女の子は、ひとり、サーフィンボードに乗る。

 第三話は、大人になった貴樹。東京での生活に疲れて、何もかも失ってしまった。そんな都会の青年の憂鬱を曲に合わせて、フラッシュバック手法で語ってしまう。

 この第三話は、ただのプロモーションアニメと違って、きちんと第一話と第二話を入れていて、曲のリズムとテンポにあわせて見せる、その編集の技は大したものです。

何度も繰り返して観てしまいました。

 監督は、小学生から大人まで、貴樹の声を水橋研二で通したのは、映画『月光の囁き』を観て、水橋研二の声が、高い声と低い声・・・両方持っている・・・と感心したからだそうです。

少年の声でも、大人の声でも確かに、きちんとわけているところはさすが役者ですね。

そして、とても「さびしげ」な声でもあり、この映画のムードにぴったりです。

 One more time, one more chanceの歌詞、「いつでも探しているよ、どっかに君の姿を」・・・・全くこの映画の雰囲気をあらわした曲ですね。

そして、昔、言えなかった「好き」という言葉は、時間がたってしまってはなれてしまえば、もう、永遠に伝えることができない、さびしさ。

 桜が満開の電車の踏切で、ふと明里に似た女性とすれ違って、振り返っても、電車が通過したあとには、誰もいない。

桜の花びらが散っているだけ・・・そんな風景に、貴樹は少し、笑うのです。

それは、哀しいような、あきらめがついたような、これから・・・・と決心したような・・・微妙な微笑みでアニメでここまで出すのはすごいことだと思いますね。

 こういう「さびしげ」な映画は大好きです。

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