ガス人間第1号
2008年5月3日 DVD
(1960年:日本:91分:監督 本多猪四郎)
名作誉れ高い映画・・・『マタンゴ』に続き、『ガス人間第1号』をやっと観ました。
特撮は円谷英二、通称「東宝変身人間シリーズ第三弾」
本多監督のホームページを見るとこの映画の公開当時のポスターが見られますが、宣伝はホラー色を出していますけれど、これは悲恋ものです。
生体実験で自分を気化させることができるようになった男(土屋嘉男)と、その男が命をかけて好きになる日本舞踊の美しい家元、春日藤千代(八千草薫)の結ばれることのない悲恋なのじゃ。
ことの始まりは、密室銀行強盗。
どうやって、犯人は入り、逃げたのか・・・・しかも犯人が乗っていた車を警察が追って崖から落ちた車には人影がない。
その近くに春日流家元の家があったこと、そして、落ち目、といわれていた春日流が急に盛り返したこと・・・から、警察(三橋達也)は、新聞記者
婚約者と一緒になって、春日藤千代を容疑者・・・と追いかけるのですが。。。
しかし、犯人の名乗りをあげたのは、水野という男。
水野は、いざとなると自分を気化させて、まさに煙になってしまうことができる。どんな銀行の金庫だってはいりこめる。
ガス人間になるときの特撮が、見どころですが今、観ても全く納得なんですね。特撮技術がいま、どんなに進んでも映画の中の雰囲気に、また、話にぴったりと合うのは円谷特撮です。
なんとかして、春日流の発表会をさせようとしますが、ガス人間と世間に知れ渡ってしまってから・・・・もう、悲劇へまっしぐらです。
きりりと横顔の額が美しい春日藤千代の八千草薫(じいやは左卜全)、男らしい三橋達也、女ながらに新聞記者としてイキイキとしている佐多啓子、そして悲しげながらも堂々としているガス人間の土屋嘉男。
昭和30年代の東京が舞台となりますが、電話ややかん、車、街の様子や喫茶店など・・・昭和の空気がとてもいいなぁ、と思いました。
さすがにわたしはまだ生まれていないのですが、子供のころの生活に普通にあって、今、ないものがこの映画にはあふれています。
すごくそこら辺がいい感じです。
本多監督は、怒ったりすることのない監督だったそうで、いつもニコニコ、女優さんには、とにかく自由にやらせて、穏やかなお人柄だったそうですが、円谷監督と組んで、東宝特撮映画を撮り続けました。
しっとりとした人間ドラマなんか、作ったらまた良かったのだろうけどなぁ、なんて勝手な観客は思ってしまうけれど、娯楽というものを追う監督は、マキノ雅弘監督といい本多監督といい、周りから慕われる人が多いのかなぁ、なんて思います。そんな空気が映画にもよくでていて決して殺伐とはしていない、しっとりとしたもの、またはじっとりとしたものを持っています。
今、なかなかこういう監督はいないなあ、なんて、観終わった後、ふぅとため息、ひとつ。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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