雲のむこう、約束の場所

雲のむこう、約束の場所

2008年5月8日 DVD

(2004年:日本:91分:監督 新海誠)

 新海誠監督の『秒速5センチメートル』の前作であり、初長編となるアニメです。

 この映画、公開されたとき絶賛されたのを覚えているのですが、やはり、人物像が・・・と思っていました。

しかし、このアニメは原作、脚本、美術、キャラクター造形、編集・・・監督と新海誠さんがやっているのですが、その美術感覚が群を抜いて素晴らしいと思います。

 

 まぁ、今はゲームもアニメも進化して、わたしはそこら辺、疎いので他にももっと凄い絵があるよ、ということもあるかもしれないなぁ、と思うのですが、何よりもこの映画、全体を貫く「さびしげ」な雰囲気が、とても好きなんです。

 設定も日本は、戦争で津軽海峡で南北に分断されて、北海道は今は蝦夷とよばれ、ユニオンの占領下にあって、アメリカ領の本土からは行くことができない。

そして、ユニオン領、蝦夷にはユニオンの塔という、ものすごく高い塔が立っており、主人公の少年少女たちは、本土最北端に住んでいて、いつもその「塔」が見える。

 あの塔とは何なのか・・・という謎もありますが、ヒロキとタクヤという2人の中学生は、塔まで飛行機で飛ぼう・・・と密かに飛行機作りをしている。

2人の少年がなんとなく憧れている少女、サユリも一緒になって、塔への思いを馳せる日々。

 しかし、サユリは突然姿を消し、ヒロキは東京へ、天才的に物理、機械に強いタクヤはアメリカ軍のユニバーシティに入り・・・ばらばらになる。

そんなときに、噂されるのが「アメリカ軍はユニオンに宣戦布告をする」

 ここから戦闘ものになるのかなぁ、なんて思っていたら、どうも「塔」に関係するのは「夢」である、、、、ということになり、眠り続ける病になっていたサユリの「夢」が軍事利用されるのを知ってしまったタクヤ。

 夢に支配される「塔」、そしてその「塔」に夢を送り続ける少女。少女が目覚めて夢がなくなるどうなるのか・・・

 タクヤとヒロキは再会し・・・・・サユリを救おうとします。

 津軽の近くということで前半は、雪や冬といった寒い季節感の出し方。ただ、メカニックをどうだ、どうだ、と出すのではなく、あくまでも、「夢」というものに沿わせているところ、センチメンタルであり、個性的でした。

絵も、高く雲を突き抜けて先が見えない、塔の絵など幻影的です。

夢の中で、いつも「ひとり」な少女。東京で孤独に耐えるヒロキ。塔の秘密になんとか近付こうとするタクヤ。

いつも一緒だった3人は、ばらばらになり、それぞれの孤独を抱える。

 アイディアも凄いと思ったのですが、よくここまで壮大な設定を「ひとり」に近い形で作り上げてしまったなぁ、と感心するのです。

新海誠監督は、原則的にはとても、まじめで、繊細な人なんだなあなどと思います。

戦争大好き、武器大好き、メカニック大好き!な男の子・・・ではなく、ひとりでなんとかしようとするタクヤ・・・に監督の姿を見たような気がします。


****追記*****

この頃は2017年社会現象にまでなった『君の名は。』の新海誠監督とは考えてもいませんでした。

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