地獄

地獄

2008年5月21日 DVDにて

(1960年:日本:100分:監督 中川信夫)

 地獄、とつくタイトルは結構ありますね。『天国と地獄』とか、『地獄の7人』とか・・・

けれども、この映画はずばり「地獄」、そして描いているのもずばり、地獄絵図。

子供のころ、地獄絵図を怖いけれど、目がそらせず、見入ってしまったのを思い出しました。

 東京フィルメックスで中川信夫監督特集のとき、時間の都合でどうしても観られなかったのが、今年、DVD化されました。

 テーマとしては『東海道四谷怪談』と同じなのかもしれません。

しかし、この映画の主人公、天知茂演じる、四郎という青年に、悪意や憎悪はないので、ましてや、殺人を犯したわけでもない。

ただ、真面目な学者を目指す学生・・・・なのに、転がり落ちるように、周りで人が死に始める。

それが、何故、をすっとばしているのが怖いんですね。

 因果があって、地獄に落ちました・・・なら納得なのですが、怖いのは、理由ないのに地獄に落ちざるをえないやるせなさ。

天知茂青年の眉間のふか~~~いしわが、苦悩の色をありありと・・・

 殺そうとしたわけではないのに、かといって無関係でもない周りの死・・・がたたみかける前半と地獄に落ちて、その人々に再会して地獄を彷徨する後半。

 殺されそうになって吊り橋でもみあっているうちに相手が・・・なんてところでは、吊り橋を上下逆さにして撮影していたり、急に止まる時計の振り子は真横だったり、大胆なアングル、というのも見どころ。

 しかし、地獄をめぐるのは終わりがないのか・・・というと、ラストはほのかな灯りのような救いのイメージ(あくまもイメージ)というのが、また、説明がないぶん、深いなぁ、と思うのです。

地獄に落ちるにせよ、救われるにせよ、説明があって納得があればどんなにいいか・・・この映画の怖さは、それがない、ということですね。 



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