マンデラの名もなき看守

マンデラの名もなき看守

Goodbye Bafana

2008年6月1日 シネカノン有楽町一丁目にて

(2007年:フランス=ドイツ=ベルギー=イタリア=南アフリカ:117分:監督 ビレ・ハウグスト)

 なにはともあれ・・・違う人種間で一番、わかりあうためには何が必要か・・・というと言葉です。

という映画でした。

そういう印象がとても強いのです。

 何故なら、黒人蔑視が当たり前の1968年の南アから映画は始まって、黒人指導者は「テロリスト」というレッテルでもってすべて刑務所へ、の中でなぜ、白人であるグレゴリー(ジョゼフ・ファインズ)が、一番の指導者と言われているネルソン・マンデラの担当になるのか・・・というとグレゴリーは子供のころ、親しかったバファナという名の黒人の友だちからコーサ語を習っていたからです。

 英語だけしかわからない(話そうとしない)白人の中で、コーサ語で何か話したら即、報告するように・・・と任命されてロベン島の監獄にやってきた看守とその家族。

 グレゴリーはアパルトヘイトを当然と思っているものの、コーサ語が話せる、わかる・・・そのことだけで、ネルソン・マンデラという人物を「知る」ことになる。言葉がわからなければ、他の白人看守と全く同じだったものを・・・。

 妻(ダイアン・クルーガー)は昇進できる・・・と喜ぶけれど、だんだん「テロリスト」マンデラが、監獄にいても堂々として、志をまげない様子にだんだん・・・時間ではなく年月をかけて、グレゴリーがわかっていく様子を丁寧に映画にしています。

 マンデラ氏は後にアフリカ初の黒人大統領になり、ノーベル平和賞をもらう・・・などあるのですが、この映画ではあくまでも、「牢獄の中のマンデラ」です。

何があっても堂々としている姿に比べ、低い給料にあえぎ、それでも白人であることを誇示しているグレゴリーがどんどん自己嫌悪のようになっていくのが見どころ。

 ジョゼフ・ファインズという役者さんは、堅実で地味な役者さんです。

描くものも地味といえば地味。

しかし、簡単にひとことで「国際平和は」などと言ってしまうより、この映画は雄弁に「国際平和」を謳っています。

それには人ひとりが成人になるくらいの27年間という時間が必要だ、というのがこの映画の一番訴えたいところなのでしょうか。

 

 これは実話でグレゴリーはすでに亡くなっていますし、マンデラ氏は今年90歳なのだそうです。

だからこそ出来た映画。

この映画を観て「時間」ということを思いました。なんでもすぐにひとことでわかろうとする、現代。

実は、わかりあう・・・・のに27年間もかかるのだ、そしてお互いわかったときにはすでにお互い年老いている。

 そしてグレゴリーは、子供のころ仲よく遊んだ、自分にコーサ語を教えてくれた、今はいない恩人に年老いて初めて'Goodbye Bafana'とつぶやくことができるのです。

じっくりと時間をかけた映画、そして、長い年月の大切さと大変さを描いた静かな名作だと思いますね。

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