狂った一頁[サウンド版](併映:『月形半平太』)
2008年6月22日 東京国立近代美術館フィルムセンターにて(長谷川一夫と衣笠貞之助)
(1926年:日本:59分:監督 衣笠貞之助)
この映画は、いろいろと話を聞いていて観たい一本でした。
高野悦子さんが、フランスで観て、岩波ホールでの上映をしたのが1975年。
この映画は無声映画で台詞はないのですが、このとき、音楽だけつけられました。
また、火事でフィルムが焼失してしまったと思われていたものが、監督の蔵の中にネガフィルムが発見されたなど、様々なエピソードを持っています。
また、マキノ雅弘監督も、この映画については(マキノ監督が’先輩’と呼ぶのは衣笠貞之助監督くらいです)、興行的には上手くいかなかったけれど映画として、素晴らしいと絶賛していましたね。
1926年ですから昭和2年くらいですが、フィルムの状態がとてもいいのに驚きました。
オープニングのクレジットタイトルなども、ものすごく洒落ているというか、洗練されたもので、まず、オドロキ。
横光利一や川端康成などと「文芸時代」の同人たちの協力で前衛映画を作る・・・ということから作られた映画ですので、原案は川端康成。
舞台となるのはある精神病院。
そこで小間使いをしている初老の男が中心となって、患者たちの様子が、逆光(多重露出)とモンタージュの手法で、ぱっぱっと雷の稲光のように切りだされていく。
そう、この映画は、雷の稲光のような映画でした。
ピカ!ばりばり!の繰り返し。
その光はまばゆいばかりです。
部屋の中で黒い服を着て、踊り続ける女の子が出てきますが、ボブカットの上、顔とかね、あまりにも今風・・・なので驚きます。
見舞にくる女の人などは、着物を着ていたりするのですが、踊る女の子は本当に現代的(当時からしたらあまりにも’未来的’だったわけです)
女の子は赤い靴のように、踊りが止まらない。ついには、手足をしばられても、体がヒクヒクしているのが、すごい。
最後に小間使いは、患者たちに能のようなお面を渡す。
面をつけた人々が、それぞれ勝手な、不気味な動きをするのがまた、すごいです。
踊る女の子はお多福の面で、踊る。
前衛映画として作られたので、理由理屈はないので、映像体験としか、言いようがないのですが、精神病院の中の奥行のあるシーン、窓の外に降りつける大雨・・・・稲光のように、カットが綴られていく手法は、今でもまったく古くないので、何度観てもいい映画だと思います。
併映された『月形半平太』(1925年)は、サイレント映画で、14分の短縮版というか、残っているフィルムをつないだもの。
月形半平太が、これから果たし合いにいく・・・という部分ですが、周りには、きれいな女の人がたくさんいて「月さま、月さま」と大変ですねぇ。
月形半平太を演じているのは、沢田正二郎で、歌舞伎役者のようです。
橋の上での乱闘などかなり迫力ありましたね。本当は弁士とかついていたんでしょうが、字幕が間にはさまれる、というもの。
映画の娯楽の歴史の一部を観たような気がします。
こういう貴重な映画を安い料金でおしげもなく上映してくれる、フィルム・センターが、わたしは好きだっ!
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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