山のあなた 徳市の恋

山のあなた 徳市の恋

2008年6月23日 渋谷・シネアミューズCQNにて

(2008年:日本:94分:監督 石井克人)

 これは1938年の清水宏監督の『按摩と女』のリメイクではなく、’カバー’なんだそうです。

音楽などで、よくリスペクトした曲を新しいアレンジで歌ったりしますね。それの映画版という試みです。

 設定が昭和初期ということなので、あまり派手なことはないのですが、映画始ってすぐに「ああ、緑がきれいな映画だな」と思いました。

わたしは、緑が綺麗に映っている映画がとても好きなのです。

この映画は、木々の緑の映画、といってもいいくらいかも。それくらい山の緑をきれいに、丁寧に撮っています。

これまでの映画がとても個性的だった石井監督ですが、『茶の味』などは、純日本風の風景がベースになっていましたから、上手いなぁ、と。

 山奥の温泉宿に春になるとやってくる按摩の徳市(草彅剛)と福市(加瀬亮)

目が見える’目開き’なんかより、ずっと勘が良くて、足が速いのが徳市の自慢です。

目が見えないからこそ、よく見えるんだ、速く歩けるのだと気の良い福市に力説します。

 さて、温泉宿で仕事を始めた2人。

徳市は東京からやってきた謎めいた女の人に、淡い恋心を抱くようになりますが・・・どうもその女の人がいく先々でお金をとられるという問題が起きてしまう。

 大事件が起きるわけでもなく、徳市の気持はあくまでも淡い恋心。

ちょっとムキになる頑固な徳市と、お人よしの福市を演じた草彅剛と加瀬亮が、上手いんですね。どうしても歩くとき杖をつくから、がにまたで、足を擦って歩くような動きとか。

他にも按摩仲間が、田中要次さん、森下能幸さんだったり、温泉宿の番頭さんが津田寛治だったり石井映画の常連さんが続々と出てくるのがいいです。

 なんとものどかな雰囲気の中で、おきる不穏な空気のじわじわとした出し方なども細かいところですが好きなところです。

今時のこれみよがしな大仰なところが全くない、本当に昔の日本映画の良いところのエッセンスを抜きだしたような雰囲気がとても好きです。 

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