JUNO/ジュノ

JUNO/ジュノ

JUNO

2008年6月23日 渋谷・アミューズCQNにて

(2007年:アメリカ:96分:監督 ジェイソン・ライトマン)

 ジェイソン・ライトマン監督の前作『サンキュー・スモーキング』は、とてもパンチが効いていてそれでいて、ユーモラスで、なによりも作っている人頭いいだろう!と感心した映画でした。

頭のいい映画はとても好きなんです。

どんなことでも描き方ひとつで、これだけ魅力的なおもしろい映画になるのか・・・と思わせるような映画ですね。

 この映画もまさに、そんな映画です。

「ティーンエイジャーの望まない妊娠」という暗くて重いテーマにもかかわらず、映画はとてもキュートでシアワセ感に満ちています。

それは、16歳で妊娠して、出産をする・・というジュノを演じたエレン・ペイジの魅力でもあるのですが、周りの人たちも魅力的ですね。

 好きだから・・・ではなくて、退屈だったら・・・で妊娠。

映画は冒頭、妊娠検査を自分でやるジュノ。尿検査なので、オレンジ・ジュースのタンク!をがばがば飲みながら歩く姿が、するり、とアニメーションになり、音楽もなんだか明るいカントリー・ミュージック風の音楽で、暗さ、重さ、全くなし!

 ジュノは、音楽が好きで、B級ホラーが好き、最新流行のものでなく、音楽もホラー映画も70年代が最高よ!というちょっと変わった女の子です。

服もかわいらしい、というよりGパンに様々なTシャツを着こなすという、カジュアルな個性的なおしゃれ。

 この映画はずっとジュノの姿を追っていて、このとき、他のひとたちは・・・・というシーンは少ないんです。

ほとんどジュノを演じたエレン・ペイジでずっぱり。

両親もジュノを責めたり、ヒステリーをおこしたりせず、意外と冷静なところも笑えます。おお、両親、冷静!とか思ってしまいました。

母は父の再婚相手で、義母になるのですが、なんとなく上手くいかないけれど、妊娠を通じて、義母との関係が深まる、という展開もいいですね。

本当だったらひたかくしにするところ、中絶を辞めたジュノは、生まれた子供を、子供が欲しくてもめぐまれない・・・という夫婦に養子に出す決心をします。

大きなお腹で学校に堂々と行くジュノ。相手の男の子がぼ~~~~っとして、なんとも可笑しい。

普通だったら、隠す、責める、怒る、憎む・・・・といったシチュエーションを見事に、ケロリとした乾いた笑いにしてしまっているその手法が素晴らしい。だから観ていて、全く不快ではないし、ジュノたちの姿につい、笑いがこぼれてしまう。笑ってる場合じゃないよ、って思うようなシーンでも、あはは!って笑える。

そんな’アンチな’ハッピー感に満ち溢れている、とても可愛らしい映画。

 台詞も風刺やひねりに満ちていて、養子に出す決心をして、誰にしよう・・・・と広告を探すと、友達のリアが「あった。イグアナやインコのとなり」

それでも、ジュノは全く気にしていなくて無神経か、というと、そこは繊細なシーンもさりげなくあります。

部屋のベッドに寝転んで、音楽を歌詞カードをみながら、音楽を聴いている表情なんか、決心したものの、打ち消せない不安がよくわかるシーンだし、お腹が大きくなってから、相手の男の子と話すとき「あなたはお腹じゃなくて、ちゃんと顔、見てくれるもんね」と言うシーンなど、すばらしいラブ・シーンです。

そして至福のラストシーン。最後の最後まで、音楽が重要な位置を占めています。

 ちなみにこの映画のプロデューサーはジョン・マルコヴィッチです。

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