帰らない日々

帰らない日々

Reservation Road

2008年7月15日 神保町 一ツ橋ホールにて(試写会)

(2007年:アメリカ:102分:監督 テリー・ジョージ)

 『ホテル・ルワンダ』で骨太のドラマを作りだしたテリー・ジョージ監督ですが、今回は、交通事故で、子供を失った家族と、そのひき逃げをしてしまった男の家族という、被害者と加害者の家族を平行して描くという、描くことは違っても「人間の良心や良識」を問う、といった真面目な態度がよくわかる映画です。

 交通事故(しかもひき逃げ)で息子を失って嘆くのが大学教授のホアキン・フェニックスですが、この映画では、ひき逃げをした犯人の家族も描くというのが冷静なところだと思います。

 ひき逃げしたのはマーク・ラファロですが、離婚したあと、週に一度だけ息子と会える。

大の野球ファンでレッド・ソックス戦を見た帰り、遅くなってしまってつい、スピードをあげたところに・・・・少年がいて・・・・

 もちろん悪いのはマーク・ラファロの方で、しかもひき逃げとは・・・・罪が重い。

しかし、殺意があって交通事故起こす人はいない、とも言えましょう。

わたしも接触事故を起こしたことがありますが、本当にあと1分、いや30秒、時間がずれていたら事故は起きなかった・・・と随分後まで、後悔がのこりました。

 なかなかひき逃げ犯人を探してくれない警察に業を煮やしたホアキン・フェニックスは弁護士の所に相談に行く。

そして担当弁護士となったのは、なんと、その犯人、マーク・ラファロだったのです。

 弁護士とはいえ、離婚他、なにもかも上手くいかない・・・息子と野球を観るときだけが楽しいように思います。

事故を起こしたらもう何もかも身の破滅。

しかし、同時に罪の意識もますますますます、増してくるのをぐんぐんと描いていきます。

自首しよう、自首しよう・・・・・・・・・・・そんなことを抱えて、普通の生活、仕事をする、そんな姿が悲惨なほど迫ってくる。

 被害者の家族からしたら、ひき逃げして自首しない奴なんて殺してやりたいくらいだし、そのせいで家族の間にもヒビが入る。

 幼い息子は無邪気に野球に熱中している。そんな姿を複雑な思いで見つめるときのマーク・ラファロがとても印象的です。

 罪をどう贖うか・・・・を単なる被害者の家族の側だけでなく、加害者の立場も描くことでこの映画は偏ったものでなく、冷静な映画になりました。

その分、すっきりした映画でもありませんね。観る方の気持、複雑。

 あえて、観客に複雑な気分を味あわせるというところ、この監督の自信と意志の強さを感じるのです。

不慮の事故から崩壊していく家族を描いた映画は、他にもあると思うのですが、この映画の「息子の背中」だけで、すべてを語ってしまう、感傷に流されない、強い意志。

 マーク・ラファロのむくんでいくような苦悩の顔。どうしてもあきらめきれないホアキン・フェニックスの目が血走っていく顔。

苦渋の映画です。

 余談ですが、まだまだ若いと思っていたホアキン・フェニックスが老眼鏡をかけていたのが、ちょっとショック。

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