敵こそ、わが友~戦犯クラウス・バルビーの3つの人生~

敵こそ、わが友~戦犯クラウス・バルビーの3つの人生~

Mon Meilleur Ennemi/My Enemy's Enemy

2008年8月2日 銀座テアトルシネマにて

(2007年:フランス:90分:監督 ケヴィン・マクドナルド)

 ドキュメンタリー映画でとりあげられるような人は、もう~~~びっくり~~~な人なのですが、このクラウス・バルビーも絶句ものの人生のヒトです。

副題にあるように大まかに3つの時代があるわけですが、ナチスの親衛隊として多くのユダヤ人を収容所送りにして拷問のプロと恐れられていたドイツ時代。

そして戦犯になるはずが、アメリカが冷戦時代に入ったことによりそのロシアの知識をCIAが’買って’反共運動に、のアメリカ時代。

次に、南米はボリビアに行き、反共活動としてチェ・ゲバラの暗殺に加わり、その後、ボリビアに第四帝国を作り上げようとしたところ、逮捕。

フランスで、裁判にかけられ(死刑がないので)終身刑となる。

 なんだかやることのスケールが大きいです。しかも強運の持ち主。

つかまっても「脱走の天才」と言われ、脱走を繰り返す。

なにがなんでも、生き延びる・・・それでおとなしくしないところがこの人のすごいところです。

 ドイツ時代、アメリカ時代、ボリビア時代も国に「利用」されたんだ、と後の弁護人は言いますが、個人と国家の結びつきが半端ではない、壮絶な人。

 もちろん、クラウス・バルビーに拷問を受けた人は、個人としてのクラウス・バルビーを許すはずがない。

しかし、「戦争のため」には必要とする人たちもいたのです。

 色々な人のインタビューが多く、字幕を追うようになってしまうのですが、ある人が語った言葉がこの人の一面をあらわしていると思います。

「(ボリビアに行ったクラウス・バルビーは)ユダヤ人よりも劣る、ボリビアのインディオたちに不満だった」

どこへ行っても白人、ゲルマン民族優越意識を貫き通した人、こういう人はたくさんいたんだろうな、と思います。

 結構、クラウス・バルビーは、けろっと嘘をつきます。いくつかのインタビューに答えていますが、

「記憶にございません」的な発言をけろっとする。それが、被害者たちの怒りの油に火を注ぐのに。

逮捕されたあと

「なんで自分だけがこんな目にあうのだ」

 傲慢さ、エゴイズム、優越感、征服欲、出世欲・・・・これはクラウス・バルビーだけじゃないんだろうなぁ・・・・しかし、それを冷静に観察して利用する人っていうのはもっとすごいかも。

戦争はまだまだ終わっていなかったのだ・・・・ということをヒシヒシと実感。今もどこかで戦争が起きている。 

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