ジャージの二人

ジャージの二人

2008年8月2日 銀座テアトルシネマにて

(2008年:日本:93分:監督 中村義洋)

 ジャージというのは不思議です。

この世に、2種類の人がいるとしたら、それはアロハ・シャツが似合う人と似合わない人だ、と思っているのですが、ジャージは「誰が着ても、見事にダサくなる」

まぁ、ジャージを着たキャサリン・ゼタ=ジョーンズとか想像してみてくださいね。

意外とジョニー・デップはきこなしてしまうかもしれないな・・・とか。

 しかし、ジャージの良さは「着ていて楽である」

おしゃれ、というのは、ある程度の我慢を強いるものだと思います。高いヒールの靴を、我慢しながらはくのですよ。

 この映画はジャージを着たときのような気楽さ・・・・の映画です。

しかし、お気楽ばかりのだらけた映画か、というとそうではありません。

 グラビアカメラマンの父(鮎川誠)と仕事を辞めたばかりの息子(堺雅人)が、なんとなく過ごす夏の北軽井沢の別荘。

別荘には祖母が集めた小学校の色とりどりのジャージがある。

暗黙の了解で、「君は何小学校にする?」とジャージにイソイソと着替える父子。

 別にルールがあるわけではないけれど、ジャージにイソイソと着替える様子がおかしい。

この父子、距離があって、いつも連絡をとっているわけではないようで、お互いの近況など知らない様子。

父は、息子のことを「君は、仕事をやめて大丈夫なの・・・?」といつも「君」と呼ぶし、息子は息子で「うんうん」と熱心に自分のことは話さない。

実は、父は父で、息子は息子で東京に帰れば、それぞれ気がかりなことがあるのです。

 息子は、奥さんが堂々と浮気していて、失業した上に結婚生活まで破綻しそう。

父は結婚、再婚を繰り返している。

 夏の別荘には色々な人が訪れてきます。

泊まった人にはイソイソとジャージを差し出すけれど、断られると、なんとなく、しょぼん。

ジャージというのは、学校で着る一種の制服です。

かといって窮屈な制服でなく、運動するための体が動かしやすい制服。

自由な別荘生活に、「制服」であるジャージをおそろいで着る。こんな使い方が、なんとなく自由、なんとなく窮屈・・・な生活をよく現わしています。

 監督は『アヒルと鴨のコインロッカー』『チームバチスタの栄光』の中村義洋。

この映画と・・・テイストの違う映画を器用に作る監督さんだなぁ、と思いました。

 おかしかったのは、軽井沢は涼しいのでテレビで「東京は35℃」などと見ると、うし!とそろってガッツポーズするのが繰り返されるところですね。

でも、まぁ、不便は不便なこともあって、いいところを挙げよう・・・となると、1:涼しい、2:ジャージ貸します・・・くらい?

 鮎川誠の飄々とした風貌、堺雅人のなんだか、泣き笑いしているような微妙な表情・・・・そんな2人がうれしそうに着るジャージ。

わたしだったら、えんじ色のジャージがいいです。

0コメント

  • 1000 / 1000

更夜飯店

過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。