酒井家のしあわせ

酒井家のしあわせ

2008年8月9日 DVD

(2006年:日本:102分:監督 呉美保)

 関西の地方都市。

ある一家がいつもの朝を迎える。

幼い妹は、お皿の中のハムを細切れにして、お父さんは、新聞を読んで食卓にいる。お母さんはお父さんと息子の弁当を手際よく作る。

そして中学生の息子は、友達が迎えに来てもまだベッドの中でうつらうつら。

 しかし、この家族、ちょっと複雑なんです。

母が夫と長男を事故で亡くし、二男を連れて再婚して、生まれたのが妹。

主人公の次雄(森田直幸)は、反抗期。口うるさい母(友近)には無愛想。継父(ユースケ・サンタマリア)にはなじめない。妹はまだ幼すぎる。

 ところが、継父が、突然、家を出る・・・・と言う。

恋人が出来たのだ・・・しかも、相手は、男。会社の同僚、麻田くん(三浦誠巳)だという。

 家族には無関心でいたいのに、気になってしまう中学生の男の子の複雑な心境を中心にしながら、「大人だからこその嘘」を描くのがこの映画です。

父が家を出て行ってしまときに玄関の金魚鉢が落ちそうになる・・・・のを母が押さえる・・・ということでわかるように、この家族の芯となっているのは実は母なんですね。

ぽんぽんときついこと、言うけれど、何か身勝手なこと言うけれど、実はそれも訳あってのこと。

嘘というより、訳ありなのですね。

大人というのは、訳あり・・・で誤解を受けることが多いのです。

嘘をつくのではなく、本当のことを言ってしまったら、周りに迷惑がかかる、だから言わない、言えない。

反抗期の男の子は、一時的に心を閉ざして話さないのですが、大人は言えない・・・のだ・・・。

 でも、一見普通の家族に見えても、ちょっと複雑なのが、嫌でも次雄はそれに対峙しなければならないときがくる。

『転校生 さよならあなた』でも、上手かった森田直幸くんでありますが、その無愛想な顔つきがなんとも・・・リアルでした。

ありそうで、ない家族。言えそうで言えない言葉。

もどかしい・・・・と一言で、切り捨てることができればどんなに楽でしょう。

この映画は、誰も「一言で切り捨てる」ことができない。そんな中、無邪気な妹だけが、無垢な存在でした。

 麻田くんを演じた三浦誠巳、伯父さんを演じた赤井英和、同級生の女の子を演じた谷村美月、中学の担任の本上まなみ・・・脇の人たちがとてもいい映画です。

音楽は山崎まさよし。あまりこれみよがしな音楽ではないのですが、青々とした田んぼの道をぽつりぽつりと歩く次雄の姿にハーモニカの音を乗せたところがとても好きです。

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