満月の夜

満月の夜

Les Nuit de la Plene Lune/Full Moon in Paris

2008年9月8日 渋谷 ユーロスペースにて(ロメールの季節)

(1984年:フランス:102分:監督 エリック・ロメール)

 エリック・ロメール監督作品の劇場公開はこれが最後、ということで、観に行きました。

もし、わたしがものすごい金持で、時間もたっぷりあるのならば、エリック・ロメール監督作品のDVD BOX(これがたくさん出ているんだ)揃えますね。

残念ながらレンタルにはなかなか並ばない監督です。

 エリック・ロメール監督の映画というのは、とにかく会話です。

男も女も饒舌・・・自分論がめじろおし・・なんですね。

そして、もし、監督に 「男と女の間に友情はあるか?」ときいたとしたら、即「ないっ!」って答えそう。

結婚とか関係なく、男女の仲というのは、恋人同士、または愛人状態・・・おともだち・・なんてきれいごとないね・・・と即答、ばっさり、だと勝手に思っているのですが。

 この映画の主人公、ルイーズ(パスカル・オジェ)は、レミという男性とパリ郊外の家で同棲していますが、レミは真面目で社交的ではない。

ルイーズには、既婚であっても「恋人の」オクターブという男性がいる。

室内装飾の仕事をしていて、家もあって、恋人もいて、愛人までいて、それでもルイーズは「束縛されたくない、でも愛されたい、でも遊びたい」という自分論をいいたてる。

 しかし、男たちも負けていませんよ。

レミはレミで、オクターブはオクターブで、「そうは言うけど・・・・」という会話の連続。

ルイーズは、職場の近くのパリに部屋を持っていて、本当は貸すつもりだったけれど、「男からの束縛」から離れるために、自分が住んで、郊外のレミとの生活に距離を持たそうとする。

 距離を持ちたい、孤独になりたい、ひとりになりたい・・・・とルイーズは言いたてますが、実は、翌日休みの金曜の夜はパーティに行きたい、踊りたい・・・・そしてそこで、また別の男の人とラブ・アフェア。

 あらすじだけ書いてしまうとなんともうんざりするような話ではありますが、映画としては、まず、出てくる人たちの着る服がおしゃれ。

ルイーズが、黒のコートに大きな真っ赤なマフラーをざっくりと巻く・・・それだけでも、真似できませ~~んというおしゃれ感、上品感が漂います。

ただ、ルイーズを演じたパスカル・オジェという女優さんは若くしてこれが遺作となってしまったそうですが、くっきりとした顔立ちで、いかにも、気丈そう・・・・で女性的なほんわか・・・というか、そういう雰囲気はありません。

男性には魅力的であっても、どこか、ギスギスしている感じがします。

男性も、きちんとした格好をして、厭味にならない身綺麗さ、というものを持っています。

 しかし、映画の冒頭、字幕が出るように、2人の恋人、2つの家を持つものは理性を失う・・・とあるように、ルイーズの自分論は通じない。

相手には相手の言い分があり、それを頑なに拒絶してしまった故のラスト。

歩き去っていくルイーズの後姿にあるのは、哀しみ・・・というより、疲労ですね。

 タイトルの満月の夜、というのは、どちらの家にも帰りたくないルイーズが深夜のカフェに行ったとき、となりの男の人が「満月の夜だから、誰も眠らない」といった話をしたことから。

フル・ムーン・・・欠けることがない満月だからこそ、安心して眠れない・・・というルイーズの「身勝手さ、贅沢な言い分」を暗示しているような「会話」です。

フランス語が堪能だったら・・・と思うけれど、結構、字幕を追うことになりますね。

エリック・ロメール監督は、会話で見せる映画が多いから、その点、あまりフランス以外の国を意識していないのではないか、とすら思える饒舌さです。

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