遠い道のり

遠い道のり

最遥遠的距離/Most Distant Course

2008年9月21日 シネマート六本木にて(台湾シネマ・コレクション2008)

(2007年:台湾:113分:監督 リン・チンチェ)

 この映画は、去年(2007年)の東京国際映画祭で上映されたのですが、満席で観られなかった映画です。

『藍色夏恋』で、鮮烈なデビューを飾ったグイ・ルンメイ・・・高校生役でしたが、この映画では上司との不倫に悩む女の人でした。

むむ。成長したなぁ、でも、あの独特の透明感のある雰囲気は相変わらずでした。

 3人の関係ない男女が、実はつながりがあって、それが台湾の東海岸で静かにクロスしていく様子を静かに追います。

音楽というより、音、がキーなっているので、映画館の音響で観た方がいい映画です。

映画館の良さって音響の良さ、でもありますから。

 台北で、録音技師をしている男の子、タンは、撮影現場をクビになり、ひとり東海岸へ行く。

そして、海の音、海辺の森林の風の音・・・などをカセットに録音しては、別れた恋人のアパートに送り続けている。

 しかし、その恋人というのは引っ越してしまって、今、住んでいるのは、ユン(グイ・ルンメイ)という女性で、会社で事務の仕事をしているけれど、密かに上司と不倫をしている。

アパートのポストには、前の住人宛てに定期的に郵便物が届く。

ふと、開けてしまうと手紙も何もなく、カセットだけ。

聞いてみると、海の音、風の音、街のざわめき・・・・そんな音をイヤホンで聞くのが、ユンの楽しみになる。

 その不倫している上司の妻は、浮気を知って苦しみ、精神科医、ツァンの元を訪れる。

しかし、ツァン自身、精神的に疲労しきっており、それは性的な倒錯・・・となってゆがんだ日々を送っている。

 ツァンは、休みをとって東海岸へ行き、タンと出会う。

カセットの送り主が誰だか知りたくなった、また、不倫という恋にも疲れたユンは、カセットのかすかな音や声から東海岸へ。

そして、少しずつ、ユンとタンとツァンは、近づいていく。

 このタイトルにもありますが、距離、というのがこの映画の軸ですね。

近くにいても、遠い、不倫という関係の距離。

別れてしまって会うことがない、元恋人との距離。

そして、人間関係の距離がはかれなくなってしまって、男と女・・・・そんな距離感をなくし、性的にゆがんでしまうという。

 そしてその距離に悩む3人の「距離」がだんだん近づいてくる・・・という距離の映画です。

決してそれは、劇的なものではなく、すれ違い・・・というものでもなく、ごく自然によりそっていく・・・というのが、じわじわと「音」をキーワードにして描かれていきます。

 この3人って、それぞれに、悩んでいるし、疲労している。なんとかしないと・・・そんな思いがあっても、日々の生活に精一杯。

しかし、東海岸に行って、すべてが解決するわけではないのですが、それぞれに救済の気持が出てきます。

憂鬱な顔をしていた、3人それぞれの表情がだんだん・・・ほぐれていくような・・・そんな「道のり」を描いた映画。

ラスト・シーンは、そんな「出会い」をきゅっと、リボン結びにしたような1シーン。いいラスト・シーンでした。

 旅行・・・という遠くへ出かける、距離を移動する・・・というのもたまにはしたくなる映画。

  

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