おくりびと

おくりびと

Deparatures

2008年10月1日 丸の内プラゼールにて

(2008年:日本:130分:監督 滝田洋二郎)

 世の中にはびこるイメージというもの。

過去、自分を振り返ると、自分もまた随分とイメージに振り回されてきたなぁとこの映画を観て思ったわけです。

なんとなく・・・・そう・・・な、感じ・・・で、実態を知って、うあ~~~みたいな経験をさんざ、してきたくせに、いまだに、イメージというものからは逃れられません。

イメージ悪い=世間体が悪い、ということでもあります。

 イメージは全て悪いかというとそうでもないのですが、良いイメージならいいけれど、悪いイメージ・・・がついてしまうとね。

なんとなく、見た目で、周りの噂話で・・・テレビ、映画なんていうのはイメージそのものかもしれません。

映画『選挙』で、立候補した人がぽつりともらす

「実際、政治を知ってるとかじゃなくて、’東大卒’と’いいひとそう’・・・それだけでいいみたいよ」

というのは鋭い、と思います。

 イメージというもので真っ先に思いつくのは、顔ですね。

顔は大事だと思うのですが、それは美男美女ということではなくて、いい顔、いい表情ってものは大事だと思うわけです。

あるミュージシャンが好きだ、と言ったとき、

「あ、私、顔がきらい」

とひとことでばっさり、斬られてしまったときは、あらまー、参りました~~~って実感しました。まぁ、その逆もあり、です。

あとスポーツで、スケートとか、新体操とか、見た目が大事なスポーツでない、水泳とか、マラソンとかでも、「かわいい」「かっこいい」で人気がでちゃったり。

イメージの世界は時に残酷。

 そして、世の中、様々なイメージがあるわけで、先に出した’東大卒’もそうですが、仕事というのも、イメージがつきまといます。

この映画は、「悪いイメージ」の仕事に目覚めていくけれど、周りとの葛藤という部分がとても身にしみました。

実際、遺体を納棺する納棺師の仕事・・・についた主人公(本木雅弘)は、妻にすぐには言えなくて「冠婚葬祭関係」と言ってしまう。

すると妻は、即、「あ、結婚式場ね」というやりとりがあって、本当のことを知った妻は、「汚らわしいっ」と実家に帰ってしまうというくだりもあります。

 別に悪いことしているわけではないのに、仕事として報酬をもらっているのに・・・汚らわしいとか、同級生に言われる「もっとましな仕事しろ」

余計なお世話ですよ。

でも、これが世の中のイメージの実態なんでしょう。

まぁ、映画としては、それが何の仕事であれ、誇りを持つことの大切さ、というものを描いていきますから、ある意味、安心ですね。

 死というのは、究極の平等である・・・ということを、映画制作の際、実際の納棺師の方を取材したときに言われたそうですが確かにそうです。

ある人が、「おれの葬式は、盛大にやるっ」と、酒飲んでもいないのに言ったことを思い出しましたが、この映画では、最初、事務所にある、値段別の棺にはたきをかけながら、事務員の余貴美子が

「人生、最後の買い物は他人が決めるのよ」

 万人が、生きているうちからピラミッドを建てたクフ王じゃないんですよ。

わたしが昔勤めていた会社の会長は、遺書で「自分の葬式は社葬にしろ」で、もう、大変な騒ぎだったこともありましたが、そんなことできる人ばかりじゃないんですね。

 この映画でも色々な人のいろいろな納棺が出てきます。

それを悲惨と描かず、飄々とした社長の山﨑努の存在、そして、たったひとりの事務員の余貴美子の不思議な存在、そして風呂屋の常連、笹野高史の存在感で救われています。

面接に行ったとき、履歴書も見ないで「はいっ、採用っ」の呼吸には笑いが。

辛気臭いだけでなく、ユーモアや絶妙な会話の呼吸、誤解を上手く物語にした部分は大きいです。

 ぜひ、辛気臭い・・・というイメージは捨てて、観てみるといい映画だと思うのです。

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